いとしいひと

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「ね…………なんか、言ってよ……」 詩乃が痺れを切らしたように呟く。 「あ……」 絞り出した自分の声は思いの外掠れていて、数秒息が詰まっていたことに気づかされた。 だって……こんなの、 夢でも見てるみたいで…… 「……詩、乃」 目の前の柔らかい髪に手を伸ばして、そっと撫でる。 詩乃が擽ったそうに首を竦めて「ん」と小さく呻く。 「……やっばいな」 触れていい距離に、詩乃がいる。 その事実だけで、胸がこんなにも熱くなる。
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