Prejudice -Day1- 7年前のあの日

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Prejudice -Day1- 7年前のあの日

   日が暮れ始めた。公園で父親とキャッチボールをして帰ってくる、10歳の少年、東人。少年野球チームでキャプテンを任せられている彼は、将来プロ野球界をひっぱっていく逸材だろうと、周りから期待されている。しかし、そんな思いは虚しくも散ってしまった。 帰り道の信号機はいつも赤になっている。東人はついていない。でも、これがまだ不幸中の幸いだったのだ。いつも通り信号が青になるのを待っていると、右側から騒がしい音がした。東人は何が来たのか興味があり、右側を向いた。すると… ドカーン。 トラックが歩道にのりあげた。信号が根元からへし折れた。東人たちは…巻き込まれた。トラックの運転手は過労で疲れていて、運転中に睡魔に誘われ、そのまま寝てしまったという。 東人が目覚めたのは、四日後。東人が目覚めたのを知った母親·美穂は、真っ先に東人に飛びついた。その後ろから、1人の医者が部屋に入ってきた。「大河原」東人の担当医だそう。東人は事故に遭った時の様子を覚えていない。でも、さっきから足が思うように動かないことに気づいた。初めての感覚に東人は勿論驚いた。そして、大河原先生は東人の近くに腰を下ろし、衝撃の一言をかけた。 「君の足は、もう動かないんだ。」 小五の東人からすれば、そんなこと嘘だと思った。でもそれは嘘なんかではない。頑張って立とうとするが、立てない。何度もやっても、立てない。「こんなの夢だ。」、そう思った。でもこれが現実だということに変わりはない。「下半身不随」。先生からそう告げられた。東人は泣いた。勿論、これが現実でないと思っていた。でも自分の頬を引っ張っても、何度引っ張っても、痛い。小五の東人にとって、受け入れ難い現実だ。 父親は、突っ込んでくるトラックから東人を守ろうとしたものの、死に至るまでには至らなかったが、昏睡状態に陥ってしまったという。東人が泣き止んだのは、夜中の2時だった。
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