3人が本棚に入れています
本棚に追加
「行ってきます」
「寝坊した」と騒ぐ姉を横目に見ながら家を出た。デートだか大学だか知らないが、勝手に遅刻すればいい。
既に会社に向かった父によると、このぱっとしない雨は夜が明ける前から降り続いているらしい。
「降るんだったらもっとバーっと降っちゃえばいいのに」
そんな誰に宛てたでもない文句をつぶやきながら傘をさして一歩踏み出すと、雨が軽く音をたてて、心地いいリズムで傘に落ちてくる。それを邪魔したくなくて、ゆっくり歩く。
雨が好きか嫌いかを訊かれたら、嫌いという人が多いかもしれない。でも、私は雨が好きだ。傘に落ちる雨の音が好き。だから、雨の日には早く起きて、家の近くの駅までゆっくり歩いて、学校の近くの駅からゆっくり歩いて登校する。
ローファーが濡れるのも気にせず、水たまりに足を突っ込む。ピシャッという音とともに、小さな水しぶきがあがる。
たぶん、学校につくころには、靴下はびしょ濡れだ。
最初のコメントを投稿しよう!