雨の音

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「おはよう」 教室のドアの近くでしゃべっていたグループに声をかけると、驚いたというより呆れた顔をされた。 「ちょっと、さっちゃん、 あまり強い雨でもなかったのにそんなに濡れちゃって......」 クリちゃんがちょっと眉を下げて、困ったように笑う。 ちなみに、このクリちゃんというのは中学の時からの友逹である。少し恥ずかしい言い方をすれば親友、とても恥ずかしい言い方をすれば大親友といったところであろうか。 本名坂井ひなた。クリっとした目、栗色の髪の毛から、中学一年生で仲良くなったとき、クリちゃんと呼ぶことにした。このあだ名は、クラス中に浸透している。 「まあ、このくらいすぐ乾くって」 私は、カバンについた水滴をカバンから出したタオルで適当にふいた。 肩やスカートが濡れているけど気にしない。 「もー、風邪ひくよ」 そう言って微笑むクリちゃんを見ていると、日向ぼっこをしているみたいに落ち着くので、「ひなた」と名前を付けたご両親はすごいなって思う。 「田辺ちゃん、馬鹿だから風邪ひかないって」 「そうそう、雨降るたびに濡れてるけど、くしゃみとかせきとかする紗千、見たことないもん」 「ついでに、お昼食べた直後の授業で起きている田辺ちゃんも見たことない」 好き勝手言っているお調子者たちに「たまには起きてるしっ!」と文句を言うと、笑い声はさらに大きくなった。
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