雨の音

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「ねえ、これから毎日、授業中に靴下乾かすの?」 クリちゃんにそんなことを聞かれたのは、放課後、下駄箱で靴を履きかえているときだった。外は弱く、だけど確かに雨が降っている。 屈んだ体勢で一瞬止まって、思い出した。 そっか、梅雨入りしたんだった。 私が起きた時に感じたように、今朝のニュースでは私たちの住んでいる地域の梅雨入りを報道していた。 「多分ね」 立ち上がって、つま先をトントンしながら少し投げやりに答えると、クリちゃんは 「風邪ひかないでね」 と笑った。 「じゃーね」 「バイバイ」 通っていた中学校の学区の端っこに住んでいるクリちゃんは、私より先に電車を降りる。 いつものようにクリちゃんにを振ってから、窓の外に目をやる。まだ雨は降り続いていて、外は灰色だった。 ちらっと腕時計を確認すると、テスト前で学校が早めに終わったので、いつもよりも早い時間だ。 なんとなく、帰りたくないな。そう思った。
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