encounter

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*  カフェを出ると既に辺りは茜色に染まっていた。  西陽が商店街のウィンドウに跳ね返り、キラキラと街全体が光を放つ。  商店街を通り抜け信号を渡ったその先は、玲子のマンションのある道路と国道が交差する。 「菖愛さんのお家はどこですか?」 「桜井町なのよ。ここからならバスかタクシーかしら?」  高校生なのに、当たり前のようにタクシーが選択肢に入る菖愛に、玲子は心の中で唸った。  さすが修護院学園のお嬢様は余裕がある。 「もしバスで帰るなら、バス停はあっちの橋を渡った所にあるんですよ。そこで良ければ送りますよ?」 「それなら玲子ちゃんともう少し話したいし、バスにしようかなぁ」    菖愛のそんな言葉に玲子は胸が沸き立った。  育った環境も性格も似ている所など何一つ無いのに、一緒に居て不思議と心地が良かったのだ。    2人は夕日を背中に受けて国道を歩き出した。  大きな川にさしかかり、橋が見える。  そういえばこの国道を歩くのは初めてだと玲子は気づいた。  郊外へと向かうこの道路沿いは大型店舗が建ち並び、店から店へと移動するにも距離がある。  普段は駅へ向かう道を歩くし、国道を通るのは専ら両親の運転する車に乗っている時だ。  大きな橋の欄干には真鍮製の椿がところどころに咲いている。  歩いて橋を渡っていると車からでは見えない、夕日の映える川面の美しさに見惚れて、いつの間にかゆっくりと歩いていた。  菖愛の方も景色を楽しんでいるらしく、2人とも自然に口数が減っていた。
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