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私達は、川辺の土手に腰を落ち着け、そこで花火を見た。
杉崎くんは私が浴衣なのを見て
「汚れると嫌だろ」
と、カバンからタオルを取り出した。
「いいいいい、いや、大丈夫です。
そんな、お気遣いなく…」
杉崎くんは、そう言う私には構わずにさっとタオルを広げると右に座ってから「そこに座れ」と自分の左側を指差した。
私は仕方なくお礼を言って、杉崎くんのタオルの上に座った。
同じタオルの上に座っているものだから思っていたのより距離が近くてドキドキした。
それと、杉崎くんは陸上部だと言っていたけど汗臭くはなくて、むしろ洗剤の爽やかな匂いがしていたので、これまた私はドキドキしてしまった。
赤や青、黄色にピンク…
色とりどりの大小形もさまざまな花火が、目の前で打ち上がっては、夜空に消えていく。
それが、見上げるほどに大きかったということを今でも憶えている。
「綺麗だな」
花火の打ち上がる音に紛れて杉崎くんの声が聞こえた。
隣を見ると色とりどりの花火の色に照らされた杉崎くんの笑顔があった。
杉崎くんが見せてくれた最初の笑顔だ。
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