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でも、決して寂しくはなかった。
私は家族のことが大好きだったし、両親が私を愛していることをちゃんと感じていたから。
お金がなくて、欲しいモノを我慢しなくちゃならない事とか、お洋服だって飾り気のない地味なのを何着かしか持っていなかったけれど、お金では買えないモノを私は両親からたくさんもらったと思う。
すこし、ぼーっとし過ぎたようだ。
華麗な身のこなしでお盆にコーヒーと砂糖とミルクを乗せると、テーブルへ向かった。
レジと厨房とテーブルを行き来して、注文を取り、料理を運び、会計をし…と、あれこれしているうちに交代の時間になった。
エプロンを外し、荷物をまとめてコートを羽織る。
「お疲れさまでした!」
「はい、お疲れ〜」
「良いクリスマスを」
休憩室からは先輩方の明るい声が帰ってきた。
裏口から外に出るとちょうど夕日が沈んでしまった後だった。
西の空にはまだ夕日のオレンジが残っていて、すっかり葉が落ちてしまった木々のシルエットを黒く浮かび上がらせていた。
その上に明るく光る星が一つ。
「あ、一番星。」
平凡な私の人生の中で、今日くらいは何か良いことがあるといいな、なんて考えてしまう。
なんと言ったって、今日はクリスマスイブなんだから。
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