魔法の腕時計

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おじいさんはそれは良かったとにこにこして、ケースを開けると腕時計を取り出した。 「サイズを合わせるから、ちょいと、腕を出してくれんかね」 腕を出すとおじいさんはするりと腕時計を通した。金属のひんやりとした感覚が暖房の効きすぎた店内では心地良かった。 「4コマくらいだねぇ。 それじゃあ、今からサイズ合わせるから、待っておいてくださいな」 そう言ってまた店の奥に消えてから、5分も経たずに戻って来た。 「サイズは合わなかったらまた来れば良い。 いつでも、合わせられるからね。 それでだ、お客さん。 この時計は私の娘がデザインして私が作ったモノで、世界にたったの一つ。 これしかない、特別な時計だ。」 そんなにすごい時計だったのならさぞかし高いのだろう、そう思って心構えをしていたのに、おじいさんの口から出たのはとんでもない値段だった。 「だから、この時計は千円で売ろう。」 「え?」 私は一千万円の聞き違いかと思って聞き直したが 「クリスマスセール!」 と、下手なウインクを返されただけだった。
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