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「もしかして、水嶋?」
それは予期せぬ再会だった。
杉崎くんは中学の時の同級生だった。
中3の夏、中総体も終わって、残すところは受験のみという時期に呑気な私達の学年は、特に勉強に専念する人が出てくるでもなく、その頃はまだみんな部活から解放されたばかりで、舞い上がって中学最後の夏を満喫していた。
それで、ひょんなことから男子3人と女子3人で夏祭りに行くことになったのだ。
その時のメンバーに杉崎くんがいた。
クラスも部活も違ったからお互いに面識はなかったのだけれど、何故か杉崎くんと私の他の4人の中では、花火が上がる頃に杉崎くんと私を2人きりにするというシナリオが出来上がっていて、実際にそれは実行された。
「んじゃ、俺たち食い物買って来っから〜」
とお調子者の…あれは確か、野球部の佐々田くん?がやけににやにやしながら大きく手を振って屋台の人混みの中に紛れ込んで行ったんだ。
それきり、いくら待っていても4人は戻って来なくて、待ちくたびれて途方に暮れていた時「ここにいても時間もったいないから」と杉崎くんが歩き出したのだった。
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