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コーヒーと夜
今日は、クリスマスイブ。
土曜日のちょうどお昼時で、家族連れや大学生のカップルなんかでお店は繁盛していた。
チリンチリン。
お客さまが入ってくるのと同時にドアについているベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
素早くお皿を食器棚に片付けるとお客さまをお席にご案内した。
「メニューはこちらになります。
ご注文がお決まりになりましたら、こちらのボタンを押してください。
それではごゆっくり。」
いつもと同じお決まりの言葉を、それでも機械的にならないように心を込めて伝えた。
厨房に戻るとコックさん達がスフレパンケーキやらビーフシチューやらと腕をふるっていたが、まだ時間がかかりそうだったので、注文票を確認してからコーヒーを淹れることにした。
このお店の売りは、なんと言ってもこのアンティークのサイフォンで淹れるコーヒー。
フラスコに水を入れ沸騰させたら、コーヒーの粉を入れたロートをフラスコに差し込む。
しばらくするとロートにお湯が登ってくる。
木ベラで浮いている粉を軽くほぐし、素早くお湯に馴染ませる。
かき混ぜるのは出来るだけ早い方がいい。
1分以上火にかけておくと苦味が出てきてしまうからだ。
こぽこぽと愛らしい音を立てて、コーヒーの深い香りが広がっていった。
火を止めて、コーヒーが全てフラスコに落ちてしまったらカップに注ぐ。
真っ白なカップに注がれたコーヒーのどこまでも続く黒を見ていたら昔のことを思い出した。
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