自己紹介

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《1》  ーー翌日。 「よう、おはよう」  真田は校門前で待ち構えていた。 「…………」  やれやれ……と、溜め息を吐き。無視をして真田の横を素通りしようとする虎崎。  そんな虎崎の首根っこを掴む。 「挨拶されたら挨拶を返すのが普通だろ? 何を無視をしようとしているんだ。それも一つの原因だぞーー友達が出来ない」 「…………」 「いいか? お前は今の状況になった原因を、全てその異質な力のせいにしているが、それは大きな勘違いだ。お前にも今のように、原因がある事を理解しろ」 「……オレに原因?」 「そうだ。お前にも原因がある」 「フッ」  虎崎は微笑を浮かべた。そして続ける。 「挨拶返すぐらいで友達出来るのかよ」 「出来るとは限らないが、きっかけにはなる。良いか? 挨拶というのは、した方がされた方への『あなたと仲良くしたい』という意思表示なんだ。返さないという事は、それの放棄ーーあなたと仲良くなりたくない、と言っているようなものだ」 「あなたと仲良くなりたくないーー実際そうしたいんだから、何を治す必要がある? オレはあんたと仲良くしたくない」  ここで会話を切り上げ、教室へ向かおうとする虎崎。  しかし真田は…… 「お前の周囲との不調和は、お前の異質さから生まれているものではないぞ。ただ単にーー  」  この言葉を聞き、虎崎は歩みを止めた。  頭に浮かび上がるのは先に述べた3つの言葉ーー 「相手に問題なんざねぇよ!」  真田の胸ぐらを、虎崎は掴む。 「オレが化け物だからダメなんだよ!! オレが悪いんだ!! つーかお前如きがオレの事分かったような事いうんじゃねぇよ。何も知らない癖に!!」  ここまで言って、虎崎は手を離す。  だが、真田は引かない。 「オレは、お前と関わりたくないなどと思っていないぞ?」 「……はぁ? だから何だって……」 「お前のその様子を見ると、これまで色々な人物から迫害を受けて来たのだろう。誰にも理解をして貰えなかった。だからこそ、今のように荒んでしまったーーと、なるとーー  という事だ」 「……何が言いてぇんだよ」 「今から、オレが今後絶対にお前を見捨てないーーという事を前提に話すぞ」  真田は言う。 「オレと、との違いは何だと思う?」  問い掛ける真田。  しかし、問われた側の虎崎は「くだらねぇ」と吐き捨てる。 「そんな前提意味がねぇよ。どうせテメェも絶対見捨てる。オレが一番それを分かってる」  そんな虎崎の言葉を、完全に無視した真田は言う。 「虎崎……それはな?  だ」 「…………」  目を細める虎崎。  対して真田は決意を込めた表情で、そんな虎崎を見つめている。 「少なくともオレは、そうありたいと思っている」 「……勝手にしろ、くだらねぇ」  虎崎は背を向け歩き出す。 「虎崎! 最後に一つ言っておく! 今日も放課後、生徒指導へと来い!! お前にちゃんと会わせたい人がいるんだ!!」  虎崎は、その言葉に返答する事は無かった。
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