自己紹介

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《4》  一悶着を終えた後、虎崎は生徒指導室の扉を開く。 「……ノックぐらいしろ」  そこにいたのは真田だった。 「だが、実際の所来てくれるとは思わなかった。ここは、来てくれてありがとうーーそう言うべきなのか?」 「何でもいい。てゆーかそもそもお前の話なんざ興味もねぇーーさっさと終わらせろ」 「ふむ、ならば何故ここに来た」 「…………」  虎崎は兎美の顔を思い浮かべた。 「どうでもいいだろ。そんな事は」  そう言い捨てると、真田が腕を組み。 「なるほど……彼女が言うように、本当にみたいだな」 「あ?」  虎崎が訝しげな表情を作ると、真田は何かを念じるかのように目を瞑った。  そしてーー  ガラッと、生徒指導室の扉が開いた。  虎崎が振り向き、その来訪者の姿を確認する。 「やっぱりな。真田がオレに会わせたがった奴はてめぇか……  兎美愛」  兎美は不適に笑う。 「本当に来てくれたのね、ありがとう。信じていたわよーー虎崎五太郎くん?」  「兎美ーー座れ」と、虎崎の横の椅子に座る事を促す真田。  逆らう事もなく椅子に座った兎美。 「フフフ、先生どうですか? 私の異質さが理解出来ましたか?」 「ああ……今、頭が混乱している」  と、机に肘をつき頭を抱えながら真田は答える。 「本当にとはな……恐れ入ったよ」 「うふふ。そうでしょう?」 「おいテメェら! 何オレを無視して会話してんだよ! ちゃんと説明をーー」 「うふふ。あなたにもちゃんと説明しますから。ゾンビの虎崎くん?」 「あぁ?」  虎崎は兎美の事を、と認識している。  昼休み、虎崎は屋上から飛び降り、地面に激突し身体中の骨がボキボキになった姿を彼女に見せた。  通常なら今こうして、生徒指導室に来ている事すら出来ない凄惨な現場を目の当たりにしても尚、怖じ気付く事なく話し掛けてくる彼女に対してーー  虎崎の頭の中では警報が鳴っていた。  ーーコイツはヤバい、と……。 「ヤバいなんて言わないでよ。私だって一応女の子なのだから、傷つくわ」 「!?」  ここでまたしても、虎崎は違和感を感じた。  それと同時に察した。 「ま、まさかお前……」  「察しの通りだ」と答えたのは真田だった。 「お前の隣にいるクラスメイトーー兎美愛は……  のだ」  真田がそう述べると、虎崎は兎美の顔を凝視する。 「マジか……お前」 「そう、マジよ」  兎美は頷いた。 「因みに、私の力は心を読めるだけじゃないのよ。相手の中にテレパシーを送る事も出来るの」  そう言って兎美は。  ーーこれからよろしくね、ゾンビくん。  と、虎崎へテレパシーを送った。 「し、信じらんねぇ。まさかとは思ったが、オレと同じような……いや、がいたなんて……」  虎崎の額から汗が流れる。  すると…… 「おっと、私はこれくらいで退散して良いんですね。分かりましたよ、先生」 「は?」  恐らく、兎美は真田の思考を読んだのだろう。早々に立ち上がり、生徒指導室から出て行こうとする。 「ちょ、ちょっと待て兎美! 訳が分かんねぇぞ! ちゃんと説明しろ!!」 「その説明はちゃんと真田先生がしてくれますよ。そうですよね? 先生?」 「……ああ」  腕を組んだ真田がそう返答する。 「ってな訳なんで、後は先生から聞いてね。まぁ、だと思うけれど。だって私はーー  あののですから」  そう言い残し、兎美は生徒指導室から出て行った。 「ど、どういう事なんだよ真田!!」  すぐ様、真田の方を振り向き問い詰めようとする虎崎。  真田は即答する。 「見ての通りだ。兎美は心が読める為、他の者達を有象無象と呼んでいるーー女の子だ」 「ちょ、ちょっと待て! それは違うだろ!!」  虎崎は何かを訂正しようとした。  真田もをちゃんと理解出来ており、「ああ……そうだな」と頷いた。  そして続けた。 「心が読める兎美はーー  」  ゾンビと呼ばれる程の異質さを持ち、これ迄の人生でーーようやく人の闇に気付く事の出来た虎崎だからこそ、心が読める事で、兎美がその闇に気付いたであろう出来事が簡単に想像出来た。  意図も容易く理解出来た。  虎崎はたかがゾンビ。  しかし兎美の異質さはーー 「時代が違えば神様になれそうな力だな……心を読めるなんて。生まれて来る時代を間違え過ぎだろ……」 「オレもそう思う」  真田が、虎崎の言葉に納得した。 「やはり虎崎、お前なら彼女の事を簡単に理解してくれたな」 「簡単にとかふざけんな! まだまだ分かんねぇよ! 何なんだよアイツは!! クラスの奴らはこの事知ってんのか!?」 「恐らく知らないと思う……しかし、彼女自身が、心を読んでいるであろう行動を見せた時、一気に話が広まる可能性がある。兎美愛はーー  化け物だーーというな」  真田は続ける。 「先程聞いた通り、彼女は他の者達を有象無象と侮蔑している。要するに、、という精神の持ち主だ。そういった行動を取ってしまう可能性は山程ある」 「……何が言いたい」 「虎崎、お前はゾンビという異質さを持ち、他の者達との関係性を切っているーーオレは、お前の事もどうにかしないければと思っている。しかしーー  お前はまだ……筈だ!」  ここで真田は立ち上がった。  立ち上がり、机に両手を乗せ頭を下げた。  そして言った。 「お前が他人を嫌いな事は分かっている!! それを承知でお願いする!!  !!  お前しか出来ない事なんだ!!」  虎崎は、真田のその姿を見て心が騒ついた。 「オレにしか出来ない……」  兎美と同様に、普通の人とは違う異質さを持った彼にしか出来ない。 「頼む……」 「うるせぇよバーカ」  どうりでオレは、兎美の事が気になる訳だ。 「普通の人間を嫌う? オレ達にとってはそんな事普通の事なんだよ。それを変えようとしたって無理に決まってんだろうが」 「分かっている。そこをお前がーー」 「当人のオレが、普通の人間の良さを知らないのにどうやってアイツを救えるんだよ!! 甘えた事を抜かしてんじゃねぇぞ!!」 「……っ!!」  真田はある事に気が付いた。  そしてニヤッと笑った。 「なるほど……先ずは……」 「……こういうのは、順序が大切なんだよ……良いか!? が分かれば、オレが絶対アイツを救ってやる!!   オレがあいつを青春させてやる!!  だから! お前らーー  !!  話はそれからだボケェ!!」  叫ぶ虎崎。  その言葉を聞いた真田は笑みを浮かべる。 「分かったーー  先ずはお前を。  我々ーー普通の人間を舐めるなよ!!」  対して虎崎は言い返す。 「テメェらこそ、オレ達ーー  異質な人間を舐めんなよ!!」 「任せておけ! 既に!」 「はぁ? 手? なんだそりゃ?」 「ふふふ、明日を楽しみにしておけ」  こうして、異質な人間達と普通の人間達の青春を賭けた戦いは始まったのであった。  青春はまだまだ遠い。
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