虎崎五太郎に青春を

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《7》  その日の放課後。  真田に呼び出された虎崎は、生徒指導室にいた。  虎崎は切り出す。 「何だよ? 話って……」 「お前……またやったみたいだな」 「は?」 「羊沢の顔に裏拳かましただろうが、他の生徒から話が飛んできたぞ……ていうか、その生徒が飛んで来たんだけどな……大変! 虎崎くんが兎美さんを泣かして、止めに入った犬凪くんと揉めてるってな」 「ふむ……間違えてねぇな」 「そんでオレが教室に行った時には既に騒ぎは終わってた訳だ……お前ら3人は居なかったよな?」 「ああ、そうだな」 「オレはてっきり、またまた犬凪がやられたのかと思ってた。そりゃ犬凪と揉めてるって話を聞いてたら、誰でもそう思うさ。しかしだ、場に居合わせた兎美に聞いた所ーー  怪我をしたのはまさかの、羊沢っていうじゃねぇか!! どうなってんだよコレは!!」  虎崎はあの時の事を思い出しつつ言う。 「あー……アレは、あの女の不幸体質が原因で……」 「は? 不幸体質?」  ここで真田が眉間にシワを寄せる。 「ちょっと待てよ虎崎……誰が不幸体質だって?」 「ああ? 誰って、羊沢が、だよ」 「羊沢が、あの噂の不幸体質の少女なのか!?」 「え? 知らなかったのかよ」 「知らなかったぁ……いや、犬凪が中学の頃、という話は聞いた事あったが……まさか、その不幸体質の少女が羊沢だったなんて……知らなかったぁ……」 「マジかよ……この先生、大丈夫かよ」  「ま、ともかく」と、真田は話を戻す。 「あんまクラスメイトに手を出すなよ? 学校外の問題になれば、? を分かってるのか?」 「……分かってるよ」 「よし、分かってるなら良い!」 「ケッ、話はそんだけかよ。オレはもう帰るぞ」  そう言って立ち上がる虎崎に、「まぁ待て、最後に一つだけ聞かせてくれ」と真田は問い掛ける。 「犬凪はどうだ? 青春させてもらえそうか?」 「…………どうだか。アイツはまだ気付いてねぇからなーーオレはもうって事によ」 「手遅れ? そんな事はない、お前だってーー」 「あ? 多分今、あんたが思っている手遅れってのとはちょっと違うと思うぞ」 「……どういう事だ?」 「その内わか……」  ガシャァン!!  ここで、突然の物音。  ガラスが割れたような物音だ。  ガシャァン!! ガシャァン!! ガシャァン!! ガシャァン!! ガシャァン!!  何度もガラスが割れる音がする。 「何事だ!?」  真田が立ち上がる。  そして、虎崎は狼狽る事なく立ち上がり。 「グッとタイミングだな……」 「……どういう事だ虎崎!?」 「そのまんまの意味だよ。オレが真の意味で青春を送れない理由を、」  虎崎は生徒指導室から出て、廊下の窓を開ける。  そして冊子に足を掛けた。 「おい、お前……まさか……」 「その、ま、さ、か」  そう言って虎崎は飛び降りたのだった。 「うおぉぉい!! 何やってんだ虎崎ーー  ここ2階だぞ!?」
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