死牛

3/8
前へ
/51ページ
次へ
《2》  そしてその日の夕方ーー  とある山奥にある廃墟に彼らのアジトはあった。  彼らのーー  【死牛】のアジトは。 「お前ら、そんでノコノコと帰って来た訳か。情けねぇ……」 「す、すいません! 牛島さん!!」 「すいませんじゃねぇぞゴラァ!!」 「ひっ!」  部下の胸ぐらを掴み、激しく怒鳴る牛島。 「良いかぁ? 失敗する事は構わねぇ、けどなぁ? 失敗するなら、前のめりになって失敗しろぉ!! この恥晒し共がよぉ!! ちょっと虎崎の野郎に気絶させられたぐらいで何言われるがまま帰って来ているんだよぉ!! 隙をついてもう一噛みするとかやる事まだあるだろうがぁ!! あぁん!?」 「す、すすすすいません!」 「クソがっ!」  そう言って手を離す牛島。  必死に謝る部下達に背を見せる。 「謝るんじゃねぇ!! カス共ぉ!!」  そして背中をブルブルと震わせている。 「まったく……出来の悪いカス共だぁ。やれと言った事の3%も出来やしねぇ……しかし、しかしなぁ!!」  その目には大量の涙。鼻水もダラダラである。  そして牛島は言う。 「お前らーー  無事で良かったぁ……」  任務の失敗云々を抜きにして、部下の無事に涙するリーダー。  それが【死牛】のリーダー。  牛島烈火(ウシジマレッカ)、という男なのだ。 「牛島さぁん!!」  部下達と涙を流しながら抱き合う牛島。  部下達を抱きしめながら、牛島は血が出る程歯を食いしばり、恨めしい目を見せる。  その矛先はーー 「虎崎の奴……ぶっ殺してやる……」  ギュッと部下達を抱きしめる力に力が入る。 「お前達の仇は必ず討ってやるからなぁ!!」 「牛島さぁーーーーん!! うわぁぁあん!!」  部下達は牛島の優しさに触れ、大声で泣いたのだった。  心ゆくまで、泣いたのだった。  その後落ち着いた【死牛】のメンバー達。  そんなメンバーの1人が…… 「牛島さん。おれ、今日化ノ森に襲撃した後。実は、こっそり残ってたんですよ」 「ん? そうなのか。で?」 「それが……オレらが去った後、虎崎に近付く男がいてーー」 「ほう、それは面白そうな話じゃねぇか」  牛島は強くその話に食い付く。  その部下が言う、近付く男とはーー犬凪の事である。  【死牛】の面々を撃退した後に行われた、虎崎と犬凪、2人のやり取りの説明を行った。 「ぷっ……」  牛島は笑う。 「プハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! 何だそりゃアイツ! 青春してんじゃねぇかよ! プハハハハハハハハ!!」  牛島は不吉な笑みを浮かべる。 「しかしまぁ、これが突破口になり得るかもしれねぇ……良くやった」 「あ、ありがとうございます!!」  部下の頭をポンと叩く。  牛島は不吉な笑みのまま言う。 「今まで奴の周りに人は居なかった筈だが……ようやくボロを出したなぁ……虎崎ぃ!!」  「おいテメェらぁ!! これから命令を言い渡すぞ!!」と牛島は叫ぶ。  部下達は耳を傾ける。 「良いかテメェらぁ!! 明日から虎崎の周囲にいる人間の事を徹底的に調べ上げろぉ!! 方法は自由で良い、最悪顔写真だけで良い!!   に、使!!」  「おぉーーーー!!」と大声で返事を返す部下達。 「ククク……覚悟しておけよ。虎崎ぃ!」  牛島の笑み。  こうして【死牛】は動き出した。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加