虎崎五太郎という男

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《5》  校内に衝撃が走った。  新入生に、あの真田がやられたーーと。  とんでもない新入生がやって来たーーと。  新入生達は、いきなりの担任不在のオリエンテーションに驚きを隠せない。  きっとあいつだ。  虎崎って奴がやったに違いない。  そんな声が飛び交っていた。  オリエンテーションからは復帰していた兎美がフフフと笑う。そして心の中で思っていた。  正解! と……  すると前の席の女子が振り向き、兎美に話し掛けて来た。 「えっと……確か、兎美……だよね? 私、蛇城って言うんだけど……怖くない?」 「……何が?」  兎美は冷たく返答する。 「何がって……その……虎崎の事」 「そう? 面白い人じゃない。アナタ達みたいな有象無象と違って」  有象無象ーーその言葉を聞いて、蛇城の顔が強張る。 「え? 何よ有象無象って、酷くない!? 私を誰だと思ってんの!? 私の事を何にも知らない癖に!!」 「あら? 勘に触った? でも大丈夫。私、聞かなくても分かるから。アナタ達みたいな何の曇りもない量産型の気持ちって。どうでも良いから話し掛けないでくれる?」  えげつない毒舌だった。 「……もう良いわよ! 覚えてなさい!!」  そう言って、蛇城は机へ向き直った。  ーー何あれ、気持ち悪い。  を聴き、兎美の落胆は更に加速。  結局はそれなのよね。  量産型はそう思うのよ。  でもーー  ーー 「早く帰って来ないかなぁ? 五太郎くん」  兎美は待ちわびる。  そのが帰って来る事を。
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