虎崎五太郎という男

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《6》  入学初日の全日程が終わり、最後のホームルームの最中に虎崎は教室へ姿を見せた。  ドアをガラッと開け。 「さーせん、サボってましたー」  そう言って。  この時には、真田も復帰しており。 「お前……どうやらアレからずーっとサボってたみたいだな。高校を舐めてるのか? 高校は中学迄とは違ってーー」 「あー、もう良いから。そういうのは。皆早く帰りたくてウズウズしてんだから、つべこべ言わずにさっさと終わろうぜ」  その発言に、生徒の中には『お前のせいだろ』という恨めしい視線を送る者もいた。  しかし、それを口に出せる者は誰一人としていなかった。  真田も言われるがまま、ホームルームを進める。  虎崎の対応策として真田と木刀を用意していた化ノ森学園だが、それは一日も保たず崩壊した。  虎崎五太郎は、想像以上の化け物だった。  ーーやっぱこのオッサンも同じか。   「以上で今日の全日程を終了する。気をつけて家に帰れよ」  真田も、そんな虎崎を改心させる事を諦めた。  かに思えたが。 「虎崎、ちょっと来い。話がある」  再び、虎崎の前に立ち塞がった。 「は? アンタ、諦めたんじゃなかったのか?」 「諦める? 何をだ?」 「何をって……オレの事を……」 「馬鹿な事を言うな。オレは教師だぞ? 生徒を前にして、諦める事などある訳ないだろう」  その言葉に、虎崎は目を大きく見開いた。 「ふざけんな……」 「何がだ?」 「どーせテメェも! 今そんなカッコイイ事言ってても、最後は諦めるに決まってんだよ!! お前らは!!」 「というのは誰の事だ? オレは今日、お前と初めて会った。誰と比べているのかは知らんが、それは」 「…………!?」  言葉を発しない虎崎。 「分かったか? 分かったらついて来い。話がある」 「チッ」  舌打ちをしながら立ち上がり、彼は真田の後をついて行く。  騒つく教室内。  そんな中、一部始終を兎美は、口をポカーンと開けている。  ーーあの担任……ただの量産型筋肉先生じゃなかったんだ……ちゃんとあの言葉を心から思ってる。へぇー何この学校、面白い人めっちゃ集まってんじゃん。 「ま、結局最後は諦めるんだけどね。皆」  兎美は、そう知った様なセリフを呟くのだった。
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