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公園に居てどのくらい経っただろう、誰も公園にいない事を確認するとトイレを出て公園のブランコに座り込んだ。
無力さと怒りがこみ上げ涙を溢すと背後から誰かが莉乃の肩を叩いた
莉乃「!…」
涙を無理やり拭うとそこには2つ上の幼なじみ、那奈がいた
那奈「莉乃、何してんの?」
莉乃「…何でもない…大丈夫」
那奈「頭抑えてる人間が大丈夫なわけ…ちょっ莉乃どうしたの!?」
血が大量に染み込まれたハンカチが那奈に見つかる
那奈「救急車よぶか━━」
莉乃「いい!!」
思わず怒鳴ってしまう
莉乃「…こんな怪我で迷惑かけたくない」
那奈「……じゃあ、包帯買ってくる…そこにいて」
駆け足で公園を出ていく那奈
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15分後
那奈「ちゃんと待っててくれたんだね」
莉乃「…」
小さく頷く
那奈「…もし良かったら答えて?何があったの?」
パッケージから包帯を取り出し頭に消毒液を吹き掛け莉乃の頭に包帯を巻く
莉乃「転んで…当り処が悪かっただけ…」
那奈「転んでこうなる訳ないでしょ!?……苛め?」
莉乃「…」
拭った筈の涙が再びこぼれ落ちる
那奈「何があったの?」
莉乃「……苛められてた子を助けた」
那奈「…そしたら莉乃が……先生には言ったの?」
莉乃「信じられると思う?」
那奈「…でも少しは何か変わるかも!」
莉乃「悪い意味では変わるかもね、次は骨折かも…ねぇ、那奈…私………死にたい………」
那奈「………それはダメだよ…」
莉乃「…どうして」
那奈「………私もさ、苛められてたんだよ、靴隠されたりハブられたり…でも、我慢して我慢して我慢して…でも、大学入ったらそんな事されなくなった!…皆優しくて本音言い合えて……多分死にたいなんて皆一度は思う事なんだよ…だから一時の感情に振り回されちゃダメ!信じられないかも知れないけど先生とか私を頼って!!莉乃のお母さんだって仕事よりも莉乃の命の方が大事に決まってる!!だから━━」
だから何?
那奈「え…?」
莉乃「だから何なの?皆一度は思う?何?皆私なの?クソ喰わされたの?靴に画鋲入れられたの?ノート燃やされたの?扉に叩きつけられてほったらかしにされた事あんの!?ねぇっ!!!!」
包帯を巻く那奈の手を払いのけ彼女の胸ぐらを掴み怒鳴る
那奈「…」
莉乃「…那奈は私じゃないでしょ?それと同じ…私は那奈みたいに強くないの!もう限界なの!先輩面して分かったような口きかないでよ!!何も解らないくせに」
那奈「…そんなつもりじゃない……莉乃に死んで欲しくないから励まそうと思って…」
莉乃「……そういうの良いよ…包帯ありがと…」
軽蔑の眼差しで那奈を見つめ、未だにおぼつかない足取りで公園を後にする
手を差し伸べた人を信用しないで勝手に見放して、見ず知らずの人に相談して否定されて、歩み寄ろうとしてくれた人を否定して……何してんだろう…何かしたいんだろう、どうして欲しいんだろう…そんな自分に嫌気がさして憤りを感じて苛立って気持ちが悪くて情けなくて惨めで愚かで独善的で腹が立った。
形容し難い様々な感情が目まぐるしく脳内を駆け巡る。
脇目も振らず自宅に向かって走り、叩きつけるように家のカードキーをリーダーに読み込ませた。
誰もいない事を確認すると這うように2階へ掛け登りドアを足蹴にして閉める。
気を狂わせながらもロープで輪を作る手際は奇妙な程迅速かつ丁寧であった。
クローゼットに備え付けられたハンガーラックにきつくロープを結び、お気に入りの椅子の上に立ち深く深呼吸をする。
莉乃「…はぁ………多分世界一間違った勇気の使い方だね…」
自嘲気味に呟き輪を首に掛け目を瞑り覚悟を決めたその時、強く家のドアを開けようとする音と声が聞こえた。
那奈「莉乃!!開けて莉乃!!死なないで!!ねぇ莉乃!!」
那奈の泣き叫ぶ声が聞こえるが莉乃には到底響く事はなく椅子を蹴り上げた
那奈「ねぇ…莉乃…返事してよ…莉乃…莉乃…」
枯れて弱々しい那奈の声だけが響いた。
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