正夫のミス

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正夫のミス

「正夫、通訳の仕事しないか?明日の朝8時からだけど」 突然上司から嬉しい言葉を頂いた。 「ええ!是非やらせてください!」 「これが会社の資料ね。場所はこの会社にいけばいいから。正夫、明日よろしく」 「はい」 と、資料を受け取って家にうきうきで帰ったわけですが。 …どうもおかしい。 この書類には、観光名所とか載ってる。なんだ? 「ねぇ、レナ。この会社って知ってる?」 「なにそれー?ツアー?」 え、ツアーって? よくよく見ると、日本人観光客向けのツアーを企画、実行する会社であった。 だまされた…。明日ってことは、ガイドしろってことかよ。 通訳といったら、有名人とか著名な作家とか、TVとか大統領とかさ…。 …なんで俺が旗持って名所案内とかしなきゃなんねーんだよ! でも…やるって言ってしまったしな。 「うあーもー!!」 「正夫!うるさいよ!なに?どうしたの?」 「いや、仕事もらったんだけど、ツアーのガイドだった」 「えー!面白そう!」 「全然面白くないし!通訳の仕事って言われたのに!ガイドとか聞いてねーし!」 「正夫がちゃんと説明聞かないからじゃん!」 ま、ごもっともですが…。 「そんなの辞めちゃえば?」 「いや。それはできない。やる!って言ったし」 「ふーん。めんどくさいね~」 「俺だってやりたくない!」 「もー!イライラしないでくれる?」 行き先は載っていなかった。明日にならないとわからないってか? そんなとこのガイドをやると思うと急に怖くなった。 次の日の午前8時。 事務所に向かい、今日の行き先をやっと教えてもらえた。もう一人ガイドさんもいるから安心した。 …が、彼はこう言った。 「ニホンゴ、ニガテデス」 ええー。俺も苦手だし、心配です。 空港に向かい、まるで現地の人みたくお出迎えした。俺、日本人だけどさ。 「ヨウコソ、NYへ!」 NYの発音だけいい、そんな台詞をもう一人のガイドと共に言う俺。 「おい!田淵(たぶち)!」 え? 名前を突然呼ばれた。声の主を探すと… そこには、友人相川が紛れていた。うげ。 「お前、こんな仕事もできたのか!すげーじゃん!まじで!」 「あ、あぁ」 そんなこんなで、知り合いの相川のいる中で、観光名所を回っていったのでした。 まるで片言のように日本語を話すガイドさんと俺、田淵。 たまに日本語がわからなくなる始末。 そして、よく話しかけてくる相川が何を言っているかわからなくなる。 「田淵、お前の日本語変だぞ?」 げ、やっぱりばれた。こんなんで通訳とかなれねーし!また勉強しないとな…。そんで、日本も行かないと。 辛い一日を過ごしたが、とりあえず無事終了した。 終わったと同時に申し訳ないが、辞めると伝えた。 「代理だから大丈夫です。また探すので」 とのことだった。それって、別に俺でなくともよかったってことだよなぁ? くそ! 事務所からふらっと出たところに、相川がいた。 「田淵〜俺は明日、宇宙ステーションに行きたいんだけどさ!お前もどう?」 「は?どうも思わない」 「は?だから…うーんと、明日一緒に行かないか?」 「だから、行かない!」 「田淵、ちゃんと日本語で話せよ!」 「日本語、話してる!行かない」 「いや、普通に話せよ!」 「…トムと行けよ」 「美空?と?…うーん、そうだなぁ…」 相川のやろー、もう英語やる気ないのかよ!イライラしながらさっさと相川から離れ、いつもの職場へと向かった。 「あの!もうあの仕事辞めました。なんで俺に紹介したんですか?」 と、上司に怒鳴り込んだ。 「正夫ならすぐにでもやると言うと思ったよ」 ちっ、俺の行動が読まれていたとは。 「正夫、残念だったね」 くっそー!! 相川弘は、アメリカにツアーに行きました。 そのツアーの後、宇宙ステーションという名の、宇宙に関するものが置いてある施設に田淵と行くつもりだったのだか… あいつ、日本語おかしいから…残念だが、田淵の勧めで美空トムと行くことになった。 美空は大学のとき同じクラスだったやつで、めっちゃ金髪のアメリカ人!って感じのやつ。田淵とはなぜかめっちゃ仲いいんだよな。 で、美空と待ち合わせたわけで。 「相川くん。お久しぶりです」 「おお!美空!」 こいつ、普通に日本語じゃーん! 「助かった!田淵は日本語が意味わからんから!英語しか喋れないのかよって感じでさー」 「相川くんは、英語勉強してるんじゃないんですか?」 う、なんとズバッとした質問なんだ。しかも敬語。 「田淵とは、日本語でいいじゃん?」 「そうですか。じゃ、行きましょう」 微妙な空気の中で二人で行ったわけだが、俺だけ楽しんでしまった。 美空は超つまんなそーにしてるし! 「な、なんかごめんな」 「いいですよ。トムは…暇ですから!」 な、なんか俺まずいこと言った? そのまま、微妙な空気のまま帰国。 日本語喋れても、美空より喋れない田淵のほうがやっぱよかったかな…。 疲れる旅であった。
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