ももの冬休み

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ももの冬休み

ふわふわな感じで目が覚めたらびっくりすることが起きてたの。 私の体は隣にあって、私はふわふわと横で浮かんでいるの。 これってどういうこと? 困っちゃったなぁ。 もうすぐ兄ちゃんが帰ってきちゃうのに。 でも、いつもみたいに眠くもないし、足も痛くないし、何だか元気になっちゃったみたいなの。 「こんにちは」 声をかけられて振り向くと、1匹の黒い猫。 びっくりして声も出せなくている私に 「お空組にようこそ」 ぶっきらぼうにその猫が言ったわ。 お空組、そうなの?私お空組になっちゃったの? お空組は、動物たちの空の世界。お役目の終わった子達が登る国なんだって、聞いたことがある。 私たちは人間の世界に降りる前にお空組のお話をされて、その時がきたらみんなお空に入るんだそうだ。 ということは、私はお役目が終わったってことなのね。 下を見て自分の顔を見るとなんとも変な顔 こんな顔を見たらみんなびっくりしちゃうなぁ。 今日はなんだかとても眠くて、眠くて眠くて 眠ったままお空組になったので、その後で口や目が空いちゃったんだわ。 もうっ。美人てみんなに言われてた私の不覚だわね。 体の力が抜けるので、こんな顔になってるけど、きっと苦しんだとか色んなこと言われるんだろうなぁ。 私はあるお家に降り立ったのは13年前。 厳しくされたり、色んな病院に連れていかれたり、でも、 すごく家の人達に可愛がってもらったの。 でもね、女の子っていうだけで、ピンクとか、赤とかお洋服を着せられると、自分は似合ってるのかどうかわからなかったっけ。 そして、あまり笑ってあげなかったかも。 そのお家の人たちも、私のことをどうしていいのか迷いながら付き合ってくれたので、私ってきっと、笑わない子みたいに思われてたかもね。 時折疲れて帰るお兄ちゃん、おとうちゃん、文句の多いお母ちゃん、みんなのことはとても大好きだった。 私のお役目は、犬という生き物に触れる経験をさせること。 ちゃんと出来たかしら? だって、こういうことを人間に教えないと、意地の悪い人や、心のない人が育つんですって。 その白羽の矢が当たったのがこのお家で、別に悪い人ってことじゃないんだけど、この家の人に、犬のすばらしさを教えてきなさいって任務だったのよ。 これに選ばれる人達はとても幸運なんですって! それまで触れたことの無い犬という生き物にみんな振り回されてたかもしれないけどね。 犬のすばらしさ、わかってくれたかなぁ。 あ、お兄ちゃんが帰ってきちゃった。 やっぱりビックリしてる。 泣いてる。 どうしよう! すると後ろで猫がこう言ったの 「大丈夫、これも任務のひとつだから」 え?どういうこと? 「愛しいものが無くなる。でも楽しい時間は残る、そしてまた誰かと楽しい時間を過ごしたくなる。君はその素晴らしさを伝えきったってことだよ」 そうなんだ。それならきっとみんな、また、新しい明日に歩けるんだね。 もしかしたら、また、楽しい時間を欲しくなるかもしれないんだね。 そうなるといいな。 だって私はとても幸せだったから もっともっと、幸せな子達を増やして欲しいな。 「さぁ、もう行くよ」 猫が言ったので、私は長い冬休みに入るためにお空に歩き始めた。 振り返ると何度も謝っているお兄ちゃんが見えた 謝らなくていいのに。 ももは、ピンクの服も、 美味しいおやつも、みんなのことが大好きで、これからもずっと大好きでいるから、いつもの笑顔が戻りますように。 あ!クリスマスプレゼント貰い損ねちゃった。 きっと可愛いお洋服だったんだろうな。 龍翔琉、作 おわり。
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