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「なぁ、お父ちゃん。戦争はいつ終わるの? よその国と喧嘩して、勝った負けたじゃなくて、どうして仲直り出来ないのかな」
「戦争は喧嘩じゃないからな」
「喧嘩とどう違うの?」
その問いに、彰は困った顔をしたまま、自分の手をじっと見つめた。
「父ちゃんだって、あかぎれは痛いさ。けれど、戦争の傷はもっと痛いし、うんとたくさんの血が流れる」
深冬があかぎれの何倍もの痛さを想像してみると、涙がこみ上げてくる。級友の後藤君の兄さんは、戦地からの便りが途絶えたままだという。心配そうな顔をしていた後藤君は、「軟弱者」と先生に殴られた。
「それにしても……今夜は、底冷えしそうだな」
こわばった深冬を察して、彰が話を変える。
やっぱり、この季節は嫌い。
得体の知れない悪寒を、深冬は舞い降りたばかりの雪花のせいにした。
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