episode260 復讐の計画②

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聞かれていた——。 コトリとヘアアイロンを大理石の洗面台に置くと 九条さんは僕の心の声を読んでいたかのように頷いた。 「参るね……君は僕を卑しいスパイにさえしてしまう」 軽やかなのはカールをつけた僕の髪だけ。 重い空気に僕らは向き合ったまま身動きさえ取れない。 「立ち聞きするつもりはなかったけど、結局立ち去れなかった」 「いいの……それは当然」 彼が詫びるのはお門違い。 だけど――。 「今日この場で貴恵に復讐を考えてるの?」 「……うん」 彼にはやはり知られたくなかった。 「それでどこぞの刑事に取り入っていたってこと?」 「いや、何もしてないよ。ただ味方になってもらおうと思って……」 復讐や駆け引きやその他諸々醜悪なもの。 「征司くんは知ってたんだろ?」 「うん……」 「僕はいつも蚊帳の外?」 天宮家としては伝統的なものだけど——。 やはり彼には僕の綺麗な部分だけを見ていて欲しいんだ。 九条さんの細い指が僕の胸元に輝くシャネルのブローチに触れる。
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