episode260 復讐の計画②

18/30
前へ
/30ページ
次へ
「失礼——」 それで冴木刑事がひるむことなく マネのミューズの如き貴恵の前に立った時には。 「何かしら?」 自ずと場が静まり——皆がそれぞれの位置から 次の瞬間に目を光らせていた。 細いスーツの胸元にすっと長い指を収める。 冴木尊は逮捕状を取ってきたのかもしれない。 僕の為に——。 僕は征司の方をちらと見やる。 あちらも人の間を縫って僕を見つめていた。 僕の為に全てを捨てるわけなんかないと征司は言った。 その男が今やろうとしていること——。 誰でもない。 あの人にだけはしっかり見届けさせてやりたかった。 それで僕を過小評価した件については 後できっちり詫びてもらうとしよう。 次に僕は雪に女王を彷彿とさせる アイスブルーのネクタイを締めた彼氏に視線を移す。 いつもの如く九条敬はトラブルを楽しんじゃいなかった。 誰より現実的な顔つきで僕と冴木を交互に眺めていた。 そして——。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加