0人が本棚に入れています
本棚に追加
1度上がった温度
「いってきまーす」
さむっ。
雪降ってなくても寒いなんて……
まあでも雪降ってる日の寒さが異常なんだよなあ。
昨日の余ってるカイロ使っちゃおうかな?
「うーん……さむい」
迷うなあ……
昨日トナカイさんに2つ投げつけて、あと3つ余ってるホッカイロ。
一個くらい使おうかな〜…?
頭の中で使うか使わないか迷っていると、
「あ」
トナカイさんの後ろ姿が。
なんか、一回会話しただけで知り合いになった気分。気まづいし、気付かれないようにちょっと距離おいて歩こ。
……あれ?今日は手袋してる……?
目が悪くて確実かはわからないけど、してるような気がする……。
ピタっ。
目を凝らしてみていると、突然彼が止まった。
「っ……」
え。何。気付かれた?!
「……」
振り向くな振り向くな振り向くな……
私は呼吸を止めた。……がしかし。
「……あ。」
「ヒィッ」
気付かれた。
「……やっぱり。」
彼は眉を寄せて怪訝そうな顔をした。
「なんか視線感じたんだよね、手に」
こわっ。
「気のせいじゃないですか?トナカイさんの手なんて見てませんけど?」
「トナカイじゃねーし!いや、絶対見てた。しかもヒィッってなんだよ。俺はお化けか??」
バレてるぅ。
「何よ。他人なのに話しかけないでよ。ナンパですか?お断りですけど。」
しらを切る!!
……って、なんで私はしらを切らなきゃいけないんだ?バレてもよくないか?え?なんで?恥ずかしい……?見てたことが……?
あれ?なんで?
「誰がアンタみたいなガキナンパするかよ。てか、ついてくんなし!」
「はぁ?!?!」
聞き捨てならないわね、今の言葉。
「誰がガキよ?!?」
「アンタだよ!ア・ン・タ!」
「どこがよ?!ていうかトナカイさんと1つしか違わないんですけどー!?」
あ。言っちゃった。個人情報……。
「だからトナカイじゃねーっつーの!……え?1つ?」
やべ。
「なんでわかんの??」
「いや……」
「てか、さっきから道同じ??もしかして同じ学校?」
しくったーー…。
同じ学校なの知られたら学校で会った時に絶対目合っちゃう……。
「……そーです。森高の1年です……」
「マジ?!?!」
「はい……」
「てか、なに、俺と同じ学校で先輩だって知ってたのにあんな口聞いてたの??」
「……そーですけど??」
もう開き直るしかない。
「うわ、アンタ何部??」
「帰宅部ですが??」
トナカイのくせに何聞いてんのよ。
「んだよ帰宅部かよー。部活の先輩に言いつけてやろうって思ったのに〜」
こわ。なにこのトナカイさん。こわっ。帰宅部でよかったー。
「残念でしたね??。てかトナカイさん、今日は手袋してるんですね?」
「ああ。誰かさんにホッカイロを叩きつけられないようにな」
うざ。まだ鼻真っ赤なのもうざい。そんなに寒いならマフラーも巻けばいいのに。
「まだありますよ、カイロ。今度は首に叩きつけてあげましょうか?」
私も、なんでこんな同じ学校の先輩に口きけるのかわからない。
普通知らない先輩にこんなこと言えない。
でもなんかこの人には言えてしまう。なんでだろ?
「いい、いらない。叩きつけ返す」
「うわ、暴力的。なんでそんなにマフラーしたくないんですか??寒いんですよね??」
「したくないからしないの。」
「寒いならすればいいのに。あ〜あったか〜い」
マフラーがあるだけでこんなに違うのに。
「かっこつけならやめたほうがいいですよ、逆にダサ「かっこつけじゃない」」
いです……って言えなかった。
「かっこつけじゃないから。 そんなのと一緒にしないで」
はぁ??
「なによ、そんなのって。じゃあ何か特別な理由でもあるんですかー??昔マフラーで首絞められたことがあるとか?お気に入りのマフラー汚したくないとか?」
「うるさい、もう着くから。じゃなー1年生」
うわ、軽くスルーされた。うざ。とことんうざ。なにあの先輩。いや、先輩なんていいたくない。トナカイだ。真っ赤なお鼻のトナカイさんだ。
……あ。
しばらく後ろから睨みつけてると、トナカイさんが手袋を取った。
……なんで?
せめて教室入るまで付けてればいいのに。
……私に見せるために付けてた??
意味わかんない。
寒いんじゃないの?
最初のコメントを投稿しよう!