1度上がった温度

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1度上がった温度

「いってきまーす」 さむっ。 雪降ってなくても寒いなんて…… まあでも雪降ってる日の寒さが異常なんだよなあ。 昨日の余ってるカイロ使っちゃおうかな? 「うーん……さむい」 迷うなあ…… 昨日トナカイさんに2つ投げつけて、あと3つ余ってるホッカイロ。 一個くらい使おうかな〜…? 頭の中で使うか使わないか迷っていると、 「あ」 トナカイさんの後ろ姿が。 なんか、一回会話しただけで知り合いになった気分。気まづいし、気付かれないようにちょっと距離おいて歩こ。 ……あれ?今日は手袋してる……? 目が悪くて確実かはわからないけど、してるような気がする……。 ピタっ。 目を凝らしてみていると、突然彼が止まった。 「っ……」 え。何。気付かれた?! 「……」 振り向くな振り向くな振り向くな…… 私は呼吸を止めた。……がしかし。 「……あ。」 「ヒィッ」 気付かれた。 「……やっぱり。」 彼は眉を寄せて怪訝そうな顔をした。 「なんか視線感じたんだよね、手に」 こわっ。 「気のせいじゃないですか?トナカイさんの手なんて見てませんけど?」 「トナカイじゃねーし!いや、絶対見てた。しかもヒィッってなんだよ。俺はお化けか??」 バレてるぅ。 「何よ。他人なのに話しかけないでよ。ナンパですか?お断りですけど。」 しらを切る!! ……って、なんで私はしらを切らなきゃいけないんだ?バレてもよくないか?え?なんで?恥ずかしい……?見てたことが……? あれ?なんで? 「誰がアンタみたいなガキナンパするかよ。てか、ついてくんなし!」 「はぁ?!?!」 聞き捨てならないわね、今の言葉。 「誰がガキよ?!?」 「アンタだよ!ア・ン・タ!」 「どこがよ?!ていうかトナカイさんと1つしか違わないんですけどー!?」 あ。言っちゃった。個人情報……。 「だからトナカイじゃねーっつーの!……え?1つ?」 やべ。 「なんでわかんの??」 「いや……」 「てか、さっきから道同じ??もしかして同じ学校?」 しくったーー…。 同じ学校なの知られたら学校で会った時に絶対目合っちゃう……。 「……そーです。森高の1年です……」 「マジ?!?!」 「はい……」 「てか、なに、俺と同じ学校で先輩だって知ってたのにあんな口聞いてたの??」 「……そーですけど??」 もう開き直るしかない。 「うわ、アンタ何部??」 「帰宅部ですが??」 トナカイのくせに何聞いてんのよ。 「んだよ帰宅部かよー。部活の先輩に言いつけてやろうって思ったのに〜」 こわ。なにこのトナカイさん。こわっ。帰宅部でよかったー。 「残念でしたね??。てかトナカイさん、今日は手袋してるんですね?」 「ああ。誰かさんにホッカイロを叩きつけられないようにな」 うざ。まだ鼻真っ赤なのもうざい。そんなに寒いならマフラーも巻けばいいのに。 「まだありますよ、カイロ。今度は首に叩きつけてあげましょうか?」 私も、なんでこんな同じ学校の先輩に口きけるのかわからない。 普通知らない先輩にこんなこと言えない。 でもなんかこの人には言えてしまう。なんでだろ? 「いい、いらない。叩きつけ返す」 「うわ、暴力的。なんでそんなにマフラーしたくないんですか??寒いんですよね??」 「したくないからしないの。」 「寒いならすればいいのに。あ〜あったか〜い」 マフラーがあるだけでこんなに違うのに。 「かっこつけならやめたほうがいいですよ、逆にダサ「かっこつけじゃない」」 いです……って言えなかった。 「かっこつけじゃないから。 そんなのと一緒にしないで」 はぁ?? 「なによ、そんなのって。じゃあ何か特別な理由でもあるんですかー??昔マフラーで首絞められたことがあるとか?お気に入りのマフラー汚したくないとか?」 「うるさい、もう着くから。じゃなー1年生」 うわ、軽くスルーされた。うざ。とことんうざ。なにあの先輩。いや、先輩なんていいたくない。トナカイだ。真っ赤なお鼻のトナカイさんだ。 ……あ。 しばらく後ろから睨みつけてると、トナカイさんが手袋を取った。 ……なんで? せめて教室入るまで付けてればいいのに。 ……私に見せるために付けてた?? 意味わかんない。 寒いんじゃないの?
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