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温度を上げるには。
あれから、土日が挟まって祝日かなんかで月曜日が休みで、火曜になってしまった。
最後にトナカイさんをみたのは金曜の体育の授業をやってるとき。
小テストでずたぼろだった私は、授業を聞くモチベーションが上がらなくてずっとグラウンドをみていた。
サッカー部なだけあってトナカイさんはめちゃめちゃサッカーが上手かった。
顔は見えないけれど、その姿はかっこよかった。
……相変わらず鼻は真っ赤だったけど。
そして今日。
やっとまたトナカイさんが見れる。
今日はせっかくつけた、あったか〜い手袋を外しやがったときに突入してカイロ投げつけようって決めている。
「いってきま〜す!」
週明けなのに、何故か元気な私。
だってトナカイさんに会えるんだもんね。
……え?
トナカイさんに会いたかったのか?わたしは?……え?なんで?
あ、カイロを投げつけたかったからか。
ポケットをね、うんうん、早く軽くしたいからね。うんうん。
「さぶっ……」
それにしても今日も今日とて寒すぎる。
マフラーと手袋をしてもこんなに寒いのに。しない人達はどんだけ寒いんだ。
……とか言ってたらいつもトナカイさんと合流する道まで来た。
あれ?
トナカイさん、いない……
出る時間早かったかな?いや、いつもと同じ時間に出たはず……。
朝練?
でも2月は先生達受験で忙しいから朝練ないって聞いてたんだけど。
今日だけあるのかな?
ーー結局1人のまま学校に着いた。
「おはよー」
「あ、梨花おはよ、月曜なのに今日ちょっと早くない?」
「今日火曜だよ」
「あ、そっか!……って、そういうことじゃなくて。週明けはいつも起きれなーいとか言ってギリギリじゃん?」
「そうだっけ?」
今日は何故かすんなり起きれたよ。
「あ、ねえねえ、今日ってサッカー部朝練あったの?」
「え?ないよ?2月はないんだよねー」
あれ?やっぱりないの?
「本当に?こっそりやってたりしない??」
「しないしない。勝手にやったら先生に怒られちゃうよ」
そっか……。じゃあたまたまトナカイさんと時間が合わなかっただけか……。
残念。
思いっきり投げつけてやろうって思ってたのに。
「あ!そういえば聞いたよ!何でマフラーしないのか!」
「おお!なんだって?!」
「なんか拓人先輩、どうもマフラーの繊維がだめらしいんだよね〜」
繊維?
「ほら、ポリエステルとかウールとかあるじゃん」
「あー、なんか服のタグについてるやつ?何パーセント、とかかいてある?」
「そうそう」
なるほど。敏感肌なのかトナカイさん。
「何の繊維がだめなの?」
「んーそこまでは聞いてないなあ。でもさ、先輩梨花のこと知らなかったっぽいよ?最初だれ?って聞かれた」
そりゃ名乗ってませんからねぇ……。
「でもゆくゆく話していくと、あ〜あの無礼な子ね、とか、言ってたよ?梨花、先輩に何したの?」
無礼な子…いやたしかに無礼ではあるけれども。
「私はあの人が寒そうだったからカイロあげただけよ」
全然無礼じゃないわ。むしろ感謝してほしいくらい。
「……渡し方が無礼だったのね」
実花は何かを悟ったように私を見つめる。
そんなに見ないでよ。
……でもそうか、そうか。繊維ね。ナルホド。
「実花、私頑張るわ」
「ん?ん?何を??勉強?」
「……勉強」
繊維の、勉強。
「あ、そう……?」
……うん、私、いつか絶対あのトナカイさんの首元にマフラーを巻きつける。
てかもう巻きつけたい。ぐるぐるぐるぐる何周も!!
よし。
こうなったら、絶っ対に巻きつけてやるんだから!!
「実花、今に見てて!私絶対にやってやるんだから!!」
「お、おう!……?」
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