0人が本棚に入れています
本棚に追加
上げさせたい温度
それから私は家に帰り、パソコンを開いて検索をかける。
「マフラー、敏感肌……っと」
するとそこには見事に"マフラーがチクチクして痛い"だの"マフラーつけるとすぐ肌が荒れる"'マフラーのチクチク、対処法教えます"など、マフラーの繊維についての記事が並んでいる。
そんなにみんなマフラーで悩んでたのか……。
私は早速、上から3つめの"マフラーのチクチク、対処法教えます"という見出しの記事をクリックする。
「ポリエ……チ?ん??ポリエ…ス、テル?」
ん??え、これ日本語?
横文字が多すぎてわからない……ちなみに難しい漢字の羅列もわからない……
とりあえず、チクチクする繊維としない繊維があるのね??
で?そのしない繊維が??メリ…メリーさん?
「羊?トナカイさんなのに羊?」
ん??
メリ……ノウー……ル??
誰?羊の名前?
メリ・ノウー・ルさん?
メリ・ノウー・ルさんの、毛が良いってこと?
え、最高級……?!
メリノウールは最高級の羊の毛……ってこれもしかして相当お高い……??
いやもしかしなくても何百万円とかするよねこれ?!?!
「無理だ……」
あ、でももう一つあるっぽい。
か……カシミ、ヤ?
おお!カシミヤって聞いたことあるかも!
え、てかまって。"カシミヤは天然繊維の王様"??
王様??キング?!……"カシミヤはメリノウールよりも流通量が少ない為値段が上がってきます"って。いやいやいや。一体いくらすんのよ??
4桁いっちゃう??こうなったら逆にいくらすんのか調べてやる。
「カシミヤ マフラー 料金……っと」
……え。
そこには数々のネットショップサイトで売られているカシミヤ生地のマフラーが写真付きで売値が出てきた。
「え?嘘だよね??」
すっかり、何百万とするほんの一部の人しか買えない高級品だと思ったらなんとそこには10000〜15000の数字が並んでいた。
一桁間違ってるわけじゃない……の?
「いや1万て。1万で最高級って。なんだよ……」
拍子抜けしたわ。
とりあえず1番安いやつをクリックした。
すると。
ん?よく見てみたら何これ。
"カシミヤのような柔らかさと保温性"って。
カシミヤではないの??
下にスクロールすると、素材・成分表記を見つけた。
「は?!」
アクリル80% ウール20%……ってカシミヤ1ミリも入ってないじゃんか。
え、これ詐欺??詐欺だよね??カシミヤ素材じゃないのにカシミヤのような。って。
うっわ騙されたー。
どうやったら本物のカシミヤのマフラー出るの?
そう思い、カシミヤ、マフラーとまた検索すると下によく検索されるワードなのか、"カシミヤ100%マフラー"と出てきた。
これだ。
早速カーソルを合わせてクリックする。
「げ」
さっきと値段ぜんぜん違う……相場30000〜50000といったところでしょうか……。
私5万円のマフラーなんて聞いたことないよ。
さっきまで何百万とか言ってたけど、逆に現実味があって怖いよ5万。
バイトもしてない高校生にはとてもじゃないけど買えない……。
どうしよう。あんなに、絶対にトナカイさんにマフラーつけさせるんだから!!って張り切ってたのに。
これじゃあぐるぐる出来ない……。
「あーもうやめたっ」
私は考えることを放棄してベッドに倒れこんだ。
そしてスマホをいじると実花からメッセージが来ていることに気付く。
「え……」
"拓人先輩、今日休みなんだって"
そう書かれていた。
"風邪??"
すぐに返す。
既読がつかない。まだ部活中なのか……。
時間が合わなかったんじゃなくて、トナカイさん学校休んでたんだ。
そりゃいないわけだ。
でも、なんでだろ?
今まで、私が記憶にある限りトナカイさんをみない日ってほとんど……いや、サッカー部の朝練の日、且つ私がよく寝坊する苦手な月曜日以外は毎日その背中を見ていた。
だから学校休むなんて珍しい気がする。
よっぽどの風邪なのか、何か重大な怪我とか、それとも身内に御不幸があったのか。
サボるような人ではなさそうだからなんか心配……。
ブーッ。
スマホが震える。
あ、実花からだ!
"インフルエンザだってさ。2年生、結構流行ってるみたい"
インフルエンザ?!
そりゃ大変だ!!
てかそうか、忘れてたけどそういえばこの時期流行してたな……。
"インフルはやばい……実花も気をつけて!"
トナカイさん、寒いから風邪も引きやすくて、インフルエンザなんかにかかっちゃうのよ。
そうよ。ほら。手袋もしないから痛い目にあったのよ。
あー。やっぱりあの、サッカー部のくせに真っ白な首元にマフラーをぐるぐる巻きつけたいわ。
もうこうなったら、作るしかない!
買うのは高いけど、作ればそんな5万もかからないっしょ!!
決めた。手芸なんて家庭科の授業くらいしかやったことないけど、やってやる。
「ママ!!マフラーの編み方教えて!!!」
私は早速手芸の得意なお母さんの元に駆け込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!