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二学期の始まり
中学最後の夏休みが終わり、今日から学校が始まる。いつもの様に通学路を歩いていると、近所のバス停に見慣れない制服姿の女の子が立っていた。
自分達の学校とは違うのが分かったが、何処の学校だろうかと眺めていると女の子と目が合ってしまった。恥ずかしくなり、視線を逸らして早足でその場から遠ざかろうとした。
しかし女の子はこちらをじっと見ているようだった。
(誰だろう……少し離れていたので顔がはっきりとは分からない、でも髪の長い綺麗そうな女の子だな……)
結局、誰なのか分からずそのまま何事もなかったように登校した。
(気にはなったがどうしようも出来ない……)
時間に余裕を持って教室に入るとクラスメイトが元気に声をかけてきた。
「おはよう、久しぶりだな皓太」
「おはよう宮瀬、始まったな」
俺の名前は鵜崎 皓太、今話しかけてきたのが宮瀬 由規で、小学校からの友達だ。
(そうだ、宮瀬に聞けば分かるかも)
「宮瀬、あのな……」
「どうした、皓太?」
宮瀬に聞こうとしたが、どう説明したらいいのか分からずに話が進まずに止まってしまう。宮瀬は不思議そうに俺の顔を見ているが、説明が思い浮かばない。
「いいや、また今度で」
上手い事説明出来そうにないので仕方なく諦めたが、また明日の朝会えるかどうかも分からないので次に見かけた時に話そうと思った。
「宮瀬くん、鵜崎くん、おはよう」
「おはよう、笹野さん」
宮瀬の彼女笹野 絢子がやって来たので、笑顔で挨拶をした。宮瀬が言うにはまだ彼女じゃないと言うがどうみても彼女しか見えない。
笑顔の可愛い宮瀬には勿体ないぐらいの女の子だ。
「おはよう、皓太」
「あっ、何だ未夢か、おはよう」
素っ気なく答えて振り返ると、芳本 未夢が頬を膨らませて不機嫌そうに立っていた。
「もう、雑な挨拶だね、絢とは全然違うじゃない」
「だって昨日も会っただろう、だいたい……」
そう言いかけて未夢を見ると、今まさに俺の頭を叩こう手を振り上げていた。
「皓太!」
振り上げた手を咄嗟にかわすと、未夢が悔しそうな顔をしている。
未夢とは幼馴染みで、俺の家の隣に住んでいて昨日も家に来て二つ下の妹と遊んでいたようだ。
「あっ、そうだ皓太」
「何だ?」
「夕方に行くからって侑美ちゃんに伝えといてね」
「何で俺が言わないといけないんだよ、全く……」
侑美は俺の妹で小さい頃から仲が良かった未夢の事を姉のように凄く慕っている。夏休みの間も度々一緒に出かけたりお互いの部屋を行き来していた。
大きく一つため息を吐いて椅子に座り直した。
(夏休みが終わって早々、通常通りだな……)
周りを見渡し、いつもと変わらない日常が戻ってきたと改めて思い朝の出来事を忘れてしまっていた。
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