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幼馴染みの気持ち
失敗したなぁ……あんなにハデにやってしまった。朝のホームルームが始まった。
皓太とは席が離れているから今はいいけど休み時間とかどうしよう……
「み、未夢……」
後ろの席の由佳ちゃんの呼ぶ声がする。
「な、なに?」
前で話をしている先生に注意しながら後を振り向いた。
「どうしたの朝から、いったい何があったのよ」
心配そうな顔をして由佳ちゃんが小声で聞いてきたが、簡単に説明出来そうにないので「後で話すよ」と答えてまた前を向いた。
(やっぱり聞いてくるよなぁ……)
心の中では反省している。朝一から皓太に叫ぶような事をしたのはマズかった。でもあの時はそうせざるを得ないぐらいの気持ちだった。
ホームルームが終わり、一時間目が始まるまで少し時間があったので、再び由佳ちゃんが私の横に来た。
「ねぇ、鵜崎くんと何があったの、何かただ事じゃないみたいだったけど」
「うん……でも今冷静になって考えたらあんなに騒ぐ事なかったなって思うの……」
予想外の返事だったのか、由佳ちゃんは不思議そうな顔をしていてので、簡単な事情を説明した。
「そうなの……流石に未夢が取り乱し過ぎかもね、もう少し冷静になれていたらね」
「うぅ……反省してます」
もっともな事を由佳ちゃんに言われて、項垂れたままそれ以上何も言う事が出来ずに黙っていた。チャイムが鳴り授業が始まろうとしていた。
「悩んでも仕方ないしね、もう一度鵜崎くんと話したら、幼馴染みなんだしきっと許してくれるよ」
心配そうな顔で由佳ちゃんは慰めるような口調で席に戻った。
(そう言われてもなぁ……)
皓太からすれば私はただの幼馴染みで付き合っている彼女ではない。だからあんな追及の仕方をすれば怒るだろし、何であんな言われ方をされないといけないんだと思っているに違いない。
「はぁ……」
周りにもわかるぐらい大きなため息を吐き、授業を始めた先生からジロリと見られてしまった。
クラスメイトにはクスッと笑われて、はっと気が付き慌てて「すみません」と頭を下げた。
(あぁ、もうサイアクだぁ……)
教科書で隠れながら机に顔を突っ伏して今度は小さく息を吐いて、チラッと皓太を見ると何食わぬ顔で授業を受けていた。
皓太の顔にちょっとだけイラッとしたけど、このままではいけない事は分かっている。でも私はどうしたらいいのか、どうすればベストなのか分からない、私の本当の気持ちはどうなのか……
(やっぱり由佳ちゃんに相談してみようかな……いや、そこはまだ曖昧にしておこうかな……)
とりあえずは元に戻るように、後で謝る事に決めた。だけどあの女の子は……もちろん気になるからよく皓太を観察しておかないといけないと思った。
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