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翌日の朝、少し期待しながら昨日と同じ時間に家を出た。
(あっ、いた!)
バス停が見える距離まで来ると、昨日と同じように女の子が制服姿で立っている。彼女も同じタイミングで俺の存在に気が付いたようで顔を上げてこっちを見ていたるようだった。昨日の様に目が合う事はなかったけど、明らかに俺を意識しているようだった。
バス停が進行方向にあるので俺は横目で伺うようにしていた。しかしバス停は道路を挟んで反対側なのでなかなか女の子の顔がはっきりと確認する事が出来ない。立ち止まるのも不自然なので歩くスピードを落とした。
バス停の前をゆっくりと通過すると彼女はちらちらとこちらを気にしている様子だった。結局、そのまま通過しただけで何事も起きることは無かった。
(もし声をかけられてもどんな反応をしたらいいのか)
そんな事を考えながら、暫く歩いていると後から慌しく足音が聞こえてきた。
「あれ? 皓太まだこんな所にいるの、遅刻するわよ」
「あぁ、未夢か……えっ、もうそんな時間か?」
未夢が追いついて来て、追い抜こうとしている。我に返り、慌てて俺も歩くスピードを上げて未夢並んでいる。
「何でこんなに遅いの、早く家を出ていたよね」
横を歩きながら未夢が不思議そうな顔で俺を見ている。ただ考えながら歩いていたら遅くなっただけなのだが、正直に答えればいろいろと追及されそうなので適当な返事をする。
「う〜ん、風が強かったからかな」
「バーカ、何言ってるのよ、どうやたら風が強いのよ、付き合ってられないわ」
呆れた顔をして未夢は更に歩くスピードを上げて俺を抜き去る。未夢に追い越されて俺はムカッときて負けたくないから更に歩くスピードを上げて未夢を追い抜こうとした。
互い顔を見合わせてムッとした顔をしてだんだんと小走りになり、最後には走り始めていた。教室に着く頃には、未夢も俺も息を切らしていた。
「どうしたんだよ、二人とも……」
宮瀬が何しているんだと言わんばかりの顔で見ている。
「未夢が……」
「皓太が……」
同じタイミングで二人が言い始めるので、宮瀬はやれやれといった顔をして呆れた様に話す。
「はいはい、仲がよろしくて俺は付き合いきれんよ」
そう言って冷たく笑いながら宮瀬は自分の席に戻って行った。俺がため息を吐くと同じ様に未夢もため息を吐いてお互いの席に向かった。
未夢との登校でバス停の女の子の事をすっかりと忘れてしまっていたが、席に着き思い出した。
(う〜ん、何か手掛かりがないものか……)
そのまま一人で頭を悩ませていたが、何も良い案が思い付く事なく朝のホームルームが始まろうとしていた。
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