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その翌日は、朝寝坊をしてしまい通常の時間より遅れて家を出発した。女の子の事が気になるので、走るまではいかないけどかなり早歩きで進んだ。しかしバス停前には誰もいなかった。
ガッカリして肩を落としながら歩いていると、昨日と同じ様に背後から慌ただしい足音が聞こえてきた。
「今朝はいつもより遅いじゃないのよ」
未夢はいつもの口調で話す。
「あぁ、ちょっと寝坊したんだよ、それにしても未夢はいつもギリギリだな」
やれやれといった顔で未夢を見ると、俺の言葉に反応したみたいで拗ねたような顔をしていた。
「大きなお世話です!」
そう言って未夢はまた昨日のように早足で進み始めたが、まだ時間に若干余裕があるのが分かっていたので俺は普通に歩いた。
未夢は気にする事なくどんどん先に行った。俺は歩きながら考えていた。
(う〜ん、明日は土曜日だ……次に見かけるとすれば明明後日の朝になるか……)
結局、今日も手掛かりが無いままだ。
「こらっ――、皓太! 遅刻になるよ」
突然、前方から大きな声が聞こえてきたが、声の主はやはり未夢だ。急ぐように大きく手招きしている。
(あれ、先に行ったんじゃないのか?)
さすがに待たせているのは悪いなと思い、小走りをして未夢が居る所まで追い付く。
「どうしたの?」
心配そうに未夢が顔を覗き込む。いきなりだったので俺は思わず仰け反り驚いたような顔をする。
未夢は学年の中でも可愛い部類に入るので、いくら幼馴染と言っても間近に顔が来れば緊張してしまう。
「びっくりするだろ……」
「もう……ほら、急ぐよ!」
未夢と俺は急ぎ足で学校に向かった。だんだんといつもの光景になってきたような気がした。
学校も三日目になると通常通りの授業になり時間が長く感じる。やっと放課後になり帰り支度を始めた。
「皓太、一緒に帰らないか?」
「おっ、宮瀬。珍しいなぁ、お前から誘うとは……」
「そうか?」
宮瀬はあまり気にした様子も無く笑顔で鞄を持って待っている。
「あぁ、部活が無いのか、引退だよな」
思い出したように言うと、宮瀬が少し寂しそうに「そうだ」と大きく頷く。
二人で昇降口まで来ると、後ろから「待ってよ〜」と声が聞こえてきて、宮瀬が笑っている。息を切らして未夢が俺達に追いついて来た。
「私も一緒に帰るよ」
「じゃあ、俺はお邪魔かな」
そのまま笑顔で宮瀬は茶化すように俺に尋ねてきたが全力で否定する。
「俺は宮瀬と帰る!」
力強く言うと、未夢がジッと白い目で俺を見るので宮瀬がそれを見かねてため息を吐く。
「はいはい、三人で帰ろう、分かりましたか」
宮瀬にピシャと言われて、俺と未夢は大人しく頷いた。
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