二学期の始まり

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 結局、俺と宮瀬そしつ未夢の三人で帰っている。  三人共に帰る方向は同じなのだが、こんなふうに一緒に帰る事は想像すら出来なかった。何故なら宮瀬はバスケ部で未夢は卓球部とそれぞれ部活に入っていたけど、俺は何も部活に入っていなかった。  学校の正門付近は三年生や帰宅部の後輩達がゾロゾロ歩いている。その中に混じって俺達はゆっくりと楽しく会話をしながら歩いていた。 「皓太は結局、部活に入らなかったね……」 「ホント、勿体なかったよなぁ……」  未夢と宮瀬が勝手に俺の事を話し始めているが、またこの話かよと聞いていた。 「もういいだろう、二人共引退したんだし……」  バスケ部のキャプテンだった宮瀬からは入学してからずっとバスケ部に誘われていたが断り続けてきた。  あれだけ勧誘して断ってきたので、普通の奴なら疎遠になりそうだが宮瀬は違っていた。バスケ以外の事は以前とは何も変わらず俺と接してくれていた。  本当の事を言えば、宮瀬がキャプテンになった時に心が揺らいだが、ある程度出来上がったチームの輪に加わり難いように感じたので結局断った。 「じゃあ、高校に入学したらもう一度やらないか?」  期待しているような目で宮瀬が俺を見る。正直、宮瀬とは同じチームでやりたい気持ちはある。 「でも、宮瀬と同じ学校に入らないと無理だろう」 「あぁ、そうだな……」  少し困惑したような顔を宮瀬はしている。宮瀬はまだ進路で悩んでいるのだろうが、俺はアドバイスが出来そうにないのでそれ以上聞かない事にした。  何となく空気が重たくなりかけた時に未夢が話を明るくしようとする。 「でもあの頃の皓太はカッコ良かったけどなぁ」 「あの頃とは、どう言うことだ? 今でも変わらんだろう」  真面目な表情ををして未夢の顔を見るが呆れて失笑している。隣にいた宮瀬も愛想笑いをしている。 「何でこんなになってしまったのかな……」  今度は未夢が俺の顔を眺めてため息を吐くような真似をする。 「やかましいわ、何も変わって無いって」 「そうかしら〜」  未夢は、冷たく笑っているが未夢が言うあの頃とはミニバスをしていた時の事だ。  あの頃は自分で言うのも恥ずかしいが確かにカッコ良かったかもしれない……この地区でミニバスをしていて俺の事を知らない人がいないくらいの選手だった。  でも俺は中学に入学してミニバスとの関係を一切絶った。だからバスケ部の勧誘も断り続けたのだ。いろいろと他人から言われもしたが、どうしてもバスケを続けていく気力が湧かなかった。 「もういいよ、大体の事は知ってるだろが……未夢」 「ふん、あの頃は大好きだったのになぁ」  口を尖らせて残念そうな顔をして未夢が空を見上げている。  何故か変な方向に話しがいってしまい、未夢と俺は気まずい感じになってしまった。  宮瀬は「へぇ〜」という顔をして聞いているが、宮瀬はこの事については知らないけど聞いてはこなかった。  微妙な空気になってしまったが、暫くしてからは宮瀬と俺は違う内容の会話をしていた。その後を未夢が少し寂しそうに付いて来ていた。
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