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週が明けて、朝寝坊する事無く起きてバス停の女の子がいるだろう時間に合わせて家を出た。
バス停が見渡せる距離まで来たが人影は見えなかった。そのままバス停の前を通りすぎるまで誰も現れなかった。
(あれれ、今朝はいないぞ、時間は間違っていないけどなぁ……)
彼女を見かけるのを期待していただけにガッカリしながら登校することになった。
「おはよ皓太、どうしたの何か落ち込んでない?」
「あぁ、未夢か……おはよう、なんでもないよ」
いつの間にか追いつき横に並んでいた未夢が俺の顔を伺っている。思わず本当の事を話してしまいそうになったが、気を取り直して誤魔化そうと無理やり明るく返事をした。
当たり前だが未夢はそんな事ぐらいでは誤魔化されなかった。
「なになに? 何かあったのでしょう、私には通用しないよ、皓太の下手な演技ではね」
「なんでもないよ」
食いついてくる未夢から逃げる様に歩く速度を上げると、「あぁ――」と拗ねた様な声を出して未夢がついてこようとする。
「もう朝から、勘弁してくれよ……」
そう呟いて、ある速度を落とす事なく、追いかけようとする未夢を無視して登校した。
その日一日中、未夢の機嫌は悪かった。宮瀬は「毎日毎日大変だな」とねぎらう様な声をかけてくれたが、未夢と仲が良い白川達から「何したのよ?」と責められる様な声をかけらる事になった。
少し肩身の狭い一日を過ごしてやっと帰られると思っていたら、月末にある体育祭の委員の仕事の打ち合わせがあるとの事で、結局はいつもより帰宅時間より遅くなった。
(最悪な一日だっだなぁ……まだ一週間の始まりなのに……)
重い足取りで一人で帰っていると、自宅近くのあのバス停前を差しかかろうとした時にバスがやって来た。
バスに乗る訳では無いので、バス停を避け気味に歩いていたがバスが停車した。
(……誰か降りるのか)
そんな感じで特に気にする事もなくバス停を通過しようとしたら、バスから降りて来たのは例の朝見かける女の子だった。
「あっ……」
「えっ……」
女の子と俺はほぼ同じタイミングで反応したが、女の子は驚いた表情をして逃げる様に俺が帰る方向に走って行った。逃げ出す瞬間、女の子は顔が赤くなった様に見えた。
一瞬の出来事で何も声をかけられず、呆然としてしまった。しかし一つだけ分かった、女の子はやはり俺の近所に住んでいる事だけははっきりした。
(何処かで会った事がある様な無い様な……)
間近で女の子の顔を見る事が出来て簡単に記憶を探るが思い浮かばないが、やはり可愛い子には違いなかったので忘れたりする事は無いのだけど……結局分からなかった。
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