二学期の始まり

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 翌日の朝、いつもと同じ時間に家を出てバス停前を通ると女の子はバスを待っていた。女の子が待っているバス停は道路の反対側だったけど移動して話かようとしたが出来なかった。 (ただのヘタレじゃん……)  自己嫌悪になりながらバス停を通過した。暫くしていつものように未夢が背後から追いついてきた。 「おはよう、あれ……今日も何か落ち込んでない?」  昨日のデジャブのような光景だが、未夢の昨日の機嫌の悪さは何処にいったのかと思っていた。 「何でもないよ、毎日毎日落ち込んでいてすみませんね」  機嫌が治っているのならいいかと嫌味ぽく返事をしたが、未夢の反応は何故か昨日と違っていた。 「まぁ、いいけどね……でもどうしてもの時は相談してよ」  心配そうな表情で未夢が言うので、俺は少しだけ罪悪感を感じていた。 (他の女の子の事で悩んでいたなんて言えない)  いくら幼なじみとは言えこれが拙い事なのは流石の俺でも分かっているつもりだ。だから黙っておく事にした。 「あ、ありがとうな……」  今日のところは素直にお礼を言って、そのまま普通に二人で登校した。  放課後になり、今日も体育祭の話し合いがあったけど昨日ほど遅くならずに帰宅する事が出来た。 (そうだ、今日は少し走ろうかな……この最近サボっていたし)  夏休みの間は、毎日運動不足の解消で夕方にランニングをしていた。もともと体を動かす事は嫌いではないのだが、一学期に体育の授業で走る事があってあまりにも足が遅くなって体力が落ちていたのにショックを受けた。  これでもかつてはミニバスチームの中では何をしても負け知らずだった。二学期が始まってから何日かサボっていたので反省をして今日はいつもより長めに走る事に決めた。  自宅から出発する前に、同じタイミングで未夢が出かけようとしていた。 「おっ、皓太これから走るの?」 「うん、最近サボり気味だったから少し長めに走ってくるよ」 「そうなの、気をつけて走りなよ」  俺が頷くと、未夢も優しく笑顔で出かけて行った。結局、今日は未夢の機嫌が悪くなることもなく調子が狂う一日だった。  自宅を出発して順調に走り、予定通りいつもより長めの距離を走っていた。その為、通常の走るコースを変えて普段走らない所を走っていた。  終盤に差し掛かり自宅の方向に向かって走っていると、例の女の子の姿が目に入ってきた。多分学校からの帰宅途中のようだが、女の子はこちらには気が付いていない。すると女の子は俺がこれから走ろうとするコースの途中の家に入って行った。 (あっ、家の表札を見れば、名前が分かるんじゃない)  流石に家の前に立ち止まる訳にもいかないので、走り去る時に上手いこと確認しようとした。家の前に差し掛かり表札が運良く分かりやすい所にあった。 (ええっと、空知……そら……ち?)  やっと名字が分かったが、心当たりがない……記憶を辿りながら考えていたら自宅に着いてしまった。 (仕方ない、明日誰かに聞いてみよう)  名字が分かっただけでもかなり前進出来たような気がしていた。
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