二学期の始まり

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 翌日の朝は、また寝坊してしまい遅れて家を出た。  名字が分かったけど、いつどこであの女の子との接点があったのか考えていたらなかなか寝付かれなかったのが原因だった。  未夢は先に出ていたようで、今朝は一人での登校になるみたいだ。 (未夢があの女の子の知り合いなら、多分俺に話しているはずだよな……)  一人で歩きながら昨晩の続きを考えていたが、もし誰かに聞くにしても何か当てがないとどうしよう出来ない。 (という事は、ミニバスの関係者か?)  もうバスケを辞めて二年以上になるので、こんなことを気軽に聞ける人物は限られてくる。 (仕方ないか……)  あまり気が乗らないと思いながら二年生の教室を訪ねた。 「あぁ何だ〜、ダメダメ先輩じゃないですか」  クラスメイトに呼ばれて笑顔でやって来た後輩が、俺の顔を見るとめちゃくちゃ残念そうな表情をしている。 「枡田よ〜、失礼だな仮にも先輩だぞ」 「えぇ〜だって、先輩が呼んでるよて言うからてっきり宮瀬先輩かと思ったら、ダメダメ先輩だから……ガッカリだよ」  冗談ではなくて本当に残念そうな顔をしているので傷つきそうだが、ミニバス時代の頃の話が聞けそうなのは枡田ぐらいしかいない。  ミニバスの頃から知っていて唯一と言ってもいいぐらい話せるのは枡田ぐらいだ。後は俺が中学に入学してからほとんどが疎遠になった。  枡田が入学して来て当分の間は話す事が無かったし、話しかけてくる事も無かった。きっかけは共通の知り合いの宮瀬だった。  ちなみに枡田が言う『ダメダメ先輩』は、俺がバスケを辞めてしまったからだ。扱いはぞんざいだが、それなりにはまだ慕ってくれているようだ。 「それでわざわざどうしたんですか?」  やっと残念そうな顔から枡田は話を聞いてくれそうな表情に変わった。 「ええっと、ミニバスをしていた頃に一つ上に空知ていう女の子がいなかったか?」  そう言うと枡田は頭を軽く捻り暫く考えているが、首を横に振る。 「同じ学年じゃないからよく覚えてないけど、多分いなかったと思うよ」 「そ、そうか……」  残念そうに言うと枡田が少し心配そうに見ている。 「その人が何なんですか?」 「えっ、いや、ちょっとね……」  枡田の質問にうまい言葉が見つからずしどろもどろな答えになってしまい焦ってしまう。 「何か訳ありみたいですね、分かりました、他にも心当たりがないか聞いてあげますよ」  仕方なさそうな表情で枡田が頷いてくれた。 「あ、ありがとう、感謝するよ、俺だといろいろと聞きづらいからな……」  寂しそうな声で言うと枡田は少しだけ気の毒そうな表情をしていたが、キツい口調で俺を見ていた。 「でも先輩が撒いた種でしょう……私は先輩が宮瀬先輩の友達だから手伝ってあげるだけですから」 「……じゃ、頼んだよ」  枡田が言う事には反論出来ずに黙っているだけで、一言だけ言って三年生の教室がある階へ戻って行った。
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