突然の出会い

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突然の出会い

 後輩の枡田が話をして数日経った昼休みに、わざわざ三年の教室までやって来た。 「ダメダメ先輩いますか!」  枡田の声に反応して教室にいた生徒が「誰?」という顔で見ているが、その中で宮瀬は苦笑しながら俺を見ていた。 「お前なぁ……ここでそうやって呼ぶか」 「あっ、宮瀬先輩〜」  枡田は俺が話すのを無視するかのように宮瀬に手を振っている。宮瀬も笑顔で手を振っているのでカチンとなる。  呼び出しておいて無視をする枡田の頭を軽くチョップして再び話しかける。 「で、何の用事だよ」 「痛いですよ、折角いい情報を仕入れてきたのになぁ……」  拗ねたような表情で枡田が答えるので、俺は手を合わせて軽く謝るフリをする。 「そうか、それはありがとう、それでどういった内容なんだ?」  真面目な顔で枡田を見て尋ねると今度はきちんと話してくれた。 「私の友達や後輩に聞いたら、多分練習とか試合をよく見に来ていた子じゃないかって言うの、確かに同じ名前で弟がチームいたような気がするのよね」 「でもこの学校に居ないという事は三つ下か……それじゃ覚えて無いなぁ」  かなり有力な情報だが自分自身に記憶が全く無いので首を捻っていると、残念そうな顔をして枡田が見ている。 「そうなんですか、私の何となくの記憶だけど、体育館の隅にそれらしき人が居たような気がするのよね……ちょっと華奢で綺麗な子がね」 「よく、覚えてるな……」 「周りの男子達はその女の子を見ていたわよ」 「……全然記憶にない」  当時の事を思い出そうとしていると、枡田が少し遠くを見るような表情で懐かしそうに話す。 「だってあの頃の先輩は、バスケ一筋て感じで周りの女子なんか興味なさそうだったかね」 「あぁ、そうだな……」  そう言われたが、あまり嬉しくは無いので苦笑いをしていた。 「あの姿は憧れたし好きだったんだけどなぁ……中学に入ったらこれだもんな、本当に残念だよ」  嫌味にも聞こえそう言い方でガッカリした様な表情で枡田が俺を見るが、黙って聞くしか無かった。 「……そんなことを言っても仕方ないだろう」  ボソッと返事をして、枡田も『そうね』という顔をしていた。 「とりあえず情報はこれぐらいかと思います、あんまりチカラになれなくて……」 「充分だよ、助かったよ」  笑顔で答えると枡田も少し安心したように笑顔になって二年の教室に戻って行った。 (やはりミニバス絡みか、でも全然記憶が無いよな……体育館の隅の女の子か)  枡田から情報を頼りに考えていたが、記憶が無いのだからどうしようもないのが現状だ。  今朝も見かけたけど、あの女の子は俺の事を多分よく知っているのだろう、  俺は全く分からないままで、どうしたらいいのか……やはりこちらから何らかアプローチをしないといけないかもと考えていた。
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