突然の出会い

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 その日の放課後、担任の先生と話していて帰るのが遅くなった。もう誰も教室には残っていないので一人寂しく帰る事にした。  校門を出て自宅方向に歩いていたが、下校中の生徒は見当たらない。 (そんなに遅くまで話していたかな?)  確かに授業が終わってからかなりの時間が過ぎていた。担任とは進路の事で相談をしてい話が長くなってしまった。  担任はミニバスの指導者と昔からの知り合いで、俺の昔の事をよく知っている。だからもう一度バスケをやらないかと言われ続けていて、環境も変わるのだからという理由で進学先に強豪校を勧めていた。 (やれやれ、昔の事を言われてもなぁ……)  確かにミニバスで全国大会に行ったし、県大会では優秀選手として表彰もされた。  だが中学ではいろいろとあって頑なにバスケはしなかった。そのお陰で大人達から様々な事を言われたが無視し続けてやっと最近落ち着いてきたのだが、志望校を絞っていく段階で再び言われ始めた。 (もうやらないって決めたし……)  考えながら歩いて自宅近くまで帰って来た所で後ろからバスがやって来て少し先にあるバス停に止まった。 (まさか降りてこないよな、まだ……)  不意にあの女の子の事を思い出していが時間的にまだ早いなと思っていたら、驚いた事にバスから本人が降りて来たのだ。 「あっ……」  バス停の手前まで来ていたので思わず発した声が聞こえてしまう距離だった。女の子は声に気が付き俺の方を向き驚いた表情をしていた。かなりの至近距離でお互いに目が合ってしまい立ち止まってしまう。  「こ、皓太くん……」 「えっ、え……は、はい」  女の子の呼んだ声に動揺して上擦った声で返事をしてしまうが、呼んだ声の主は焦った顔で真っ赤になっている。 「ご、ごめんなさい、いきなり名前を呼んだりして……」  真っ赤な顔をして頭を下げて謝り始めたので、驚いた俺は狼狽えてしまい周りを見渡していた。 「あ、頭を上げてよ、ええっと、空知さん」 「な、何で名前を……」  顔を上げた空知さんは、驚いた表情で俺をみると更に真っ赤な顔になる。 「やっぱり当たってた、良かったよ。後輩から聞いたんだよ」 「そ、そうなの?」 「うん、昔の事を覚えていた後輩がね、よく練習とか試合を見に来ていた子じゃないかってね」  お互いに少し落ち着いた感じになってきたので状況を話す。後輩の枡田が言っていた通りで、空知さんは弟について来て体育館の隅で練習を見ていたようで、そこで俺の事を知ったようだ。  元々は、隣町の学校で夏休み中にここに引越して来て残りわずかなのでバスで通っている。  空知さんは俺がこの辺りに住んでいるのは知っていてたが、二学期の最初に見かけた時はかなり驚いたそうだ。
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