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「あのね。それ、おねえちゃんのなの」
砂場から1人の女の子が拙い足取りで寄ってきた。年は7歳くらいか。
「そうなの?」
青年は女の子の目線までしゃがんだ。
「おねえちゃんのおきにいりなの」
「そう」
青年は、雪だるまを横目で見る。雪だるまは何も変わらない。マフラーは雪だるまのお気に入りでもあった。
「……、ちょっと待ってね」
青年は雪だるまに向き直った。途端に、雪だるまが口を開いた。
青年は、アルバイトを終えてその日のうちにもう一度公園を訪れた。予想通りだった。なぜだか、そんな気がしていた。
雪だるまは溶け切っていた。
雪だるまからの伝言。
「困ってたんだ。このままじゃ、暑くて僕は溶けちゃうよ」
青年は、雪だるまの上下の接続部からマフラーを取り去った。
「これで、お姉ちゃんを温めてあげるといい。風邪かな?熱があるんだね?」
「なんでわかるの?」
「彼が雪だるまだからだよ。僕は、彼の言葉をそのまま言ってるだけなんだ」
すごーい、と女の子は目を輝かせ、声を弾ませた。
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