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「やあ、フリーター。また来たのかい?」
雪だるまが言った。
「ただいつもいるだけだよ」
青年はうんざりしたように応える。
「それにしても、あんた言葉がうまいな。雪だるまのわりに」
「君こそ、人間なわりに理解力がある」
「……まあね。いいもんしてるな」
青年は雪だるまの上部と下部の接着面に巻かれた赤いマフラーを軽く引っ張るようにして触った。
「乱暴はやめてね」
「もちろん」
「たぶんこれのおかげなんだ」
「雪だるまくんが言葉が上手なの?」
「そうそう」
青年はふーん、と声をこぼしながら、動くはずのない雪だるまが頷いたように見えたことを瞬きの間で確認していた。
「雪だるまくん、いくつ?」
「生後2日だね。ちょくちょくあの子たちが直してくれるから」
雪だるまは、公園の端っこのベンチの隣のゴミ箱の傍に作られていて、ちょうど遊ぶ子どもたちを見守ることのできる向きで立っている。
「2日前からの落とし物か……」
「落とし物?フリーターくん、これって落とし物なのかい?」
「きっとね。ほら、ここなんか汚れてるし」
青年は、雪だるまの首元を指差してから、少し擦っていた。さらに目を近づける。
「取れないな。てか、雪だるまくんには見えないよな」
「うん」
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