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「これだからヤメケンは食えないって言うんだよ」  応接ソファに座る少々無礼な来客は吐き捨てるように呟いた。  夕刻、手塚法律事務所に訪れたこの日最後の客だった。  デスクの椅子に座っていた手塚玲は、こういう客にはそれ相応の態度で充分だな、と判断する。  背もたれに寄りかかり長い足を組むと、ひじ掛けに両の腕を乗せて手を組んだ。 「生憎、僕は検事を辞めてかれこれ10年以上経っておりますのでその言葉を言われても、あまりピンと来ませんね」  上品な美貌に浮かぶ笑みは、対峙する者に時に背筋を凍らせるような恐怖を与える。玲は微笑んだまま静かに言った。 「お引き取りください」
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