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 囁く声が、意識の泉の底でふわふわと漂うわたしの耳に届いた。  心地よくて、心を優しく抱いてくれる甘い声だ。  大好きな声。  躰を芯まで痺れさせて、手を伸ばさせる、そんな声――。  あれ、ちょっと待って。  私は、パチッと目を開けた。  目の前にニッコリと優美に微笑む彼の顔。 「おはよう、僕のピアニスト」  玲君?  頭が、ゆっくりと始動する。
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