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真夜中にふと目を覚ますといつも、柔らかな手が腰の傷に添えられている。
古傷の痛みを和らげてくれる温かで優しい手の主は、今夜も腕の中で静かな寝息を立てていた。
玲は彼女の額にそっと手を添え、そのまま髪の毛を梳いた。
咲希と再会できるとは夢にも思っていなかった頃、婚約した女性がいた。
不意に思い出した、不意に、婚約していた彼女からの問いかけが脳裏に蘇った。
『玲さんは、どうして検事をやめて弁護士になったの?』
あの時自分はなんと答えたかな。
玲は当時の記憶を引き出して、苦笑いした。
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