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──俺にとっての大事な人?そんなん決まっとるやん。 ななちゃんはな、俺のキラキラ輝く青春を全部あげたって構わんくらい、大事な女の子やねん。 あれは、俺が中3の時やった。 オカンが伸び悩んでいる俺の成績を見かねて、友達の友達の親戚の子どもの……ってまあ意味わからんくらい遠い知り合いの大学生が家庭教師をしてくれるんやと。それが、ななちゃんやった。 はじめは女の人やし、ななちゃんもクールというか地味で大人しい子やったから話が弾むわけもなく。やけど、ななちゃんの教え方はめっちゃ分かりやすくて。成績もぐんぐん上がって、それを喜んでくれるななちゃんがいつの間にかアホみたいに可愛く見えるようになった。 「せんせえ!見てや!この苦手ゾーン克服や!」 「すごいじゃん、晴くん!」 幸せそーに笑うななちゃんを喜ばせたい。それが俺の勉強を頑張る原動力にもなってた。絶対、志望校に合格してななちゃんに喜んでもらうんやって。 たったそんだけの、純粋な恋やった。 それがいつしか“独占欲”っちゅードロドロしたもんに支配されるようになって、先生を俺だけのものにしたい、なんてガキなりに考えるようになった。 それが顕著に表れたのは、忘れもせえへんあの日や。 「せんせー、ここ分からへんわあ」 「どこー?ああ、ここはね……」 近くにおると、ふわっと先生の香りがして、頭がくらくらする。 奇麗な指先も、可愛い横顔も、髪を耳にかける仕草も、何もかもが俺を魅了する。 「……先生は、彼氏とかおるん?」 そう聞いたのはただの興味やった。 「いないけど」 「ホンマに!?」 何となく、おらんやろうなあとは思っとったけど、相手は華の大学生。俺の知らん世界があって、俺の知らん顔した先生が、俺の知らん男と笑い合って、触れ合って……想像したくもないけど、そうあってもおかしくはない。 「うん、モテないもん、私」 「……やろーなあ」 そんなモテへん女を好きな男がここにおるねんで? 「皆が皆、晴くんみたいにモテると思わないでよね」 「ええやん、そっちのが」 「……なんで?」 「なんとなく」 「なにそれ」 モテへん方がええよ。ライバルは少ない方がええやんか。先生の可愛いところは全部俺だけが知っとったらええ。俺のも全部、先生にあげるから。
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