接待

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 料亭に入ると、三十代ぐらいの美人女将が出迎えてくれた。川西部長はかなりのお得意様らしく、恭しくもてなされていた。  まだ先方は来てないと聞き、気楽な気持ちで女将の後をついて行った。  ピカピカに磨かれた廊下を進み、通された和室は二間続きで、広々としていた。  青々とした畳からは清々しい香りがした。  床の間も立派で、見事な山水画の掛け軸がかかっている。  障子戸の向こうの広縁の先には美しい日本庭園があった。  かなりいい部屋だ。  黒崎SVP(シニアバイスプレジデント)は川西部長にとって重要な接待相手のようだ。  今夜は失敗はできないな。相手の機嫌を損ねないように気をつけなければ。  緊張した気持ちで川西部長と共に、下座に腰を下ろした。  席は四人分が用意されている。 「今夜は黒崎さんの奥さんもご一緒なんだよ」    新たな情報を川西部長が付け加える。 「奥様も?」  接待の場で奥様同伴というのは珍しい。 「お連れ様がおつきです」  女将の声がした。  障子戸がゆっくりと開き、女将に案内され、黒崎SVPが入ってくる。顔を見て胃が痛くなった。  鈴原先生の堀の深い顔をした旦那だった。  黒崎に続いて先生も入って来た。
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