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やっぱり人を呼ぼう――とまた振り返ろうとして、ふと、その民家から、小さな子供が二人、駆け出てくるのが目に入った。
子供たちは、家先の木に何かが掛かっているのにすぐ気が付き、顔を見合わせる。
「――君たち!」
雪蘭は声を上げながら、麦畑の中央に開かれた土道を進んだ。
彼らはすぐにこちらを振り返り、また丸い顔を見合わせている。二人とも男の子で、麻の襦褲を着て、煤汚れた膝頭をあらわにしており、見ているだけでも寒そうだった。
「それ」雪蘭は木の枝に掛かった首巻きを指差して言った。「取ってくれないか? 木登りは得意だろう」
麦畑を横切って、雪蘭は彼らの前に立った。子供たちは自分の腹くらいまでの背丈しかない。けれども、こういう子供たちでも、軽々と木に昇ってみせるのだということを、長い旅を通して学んでいた。
しかし、雪蘭の思惑を外れて、子供たちはもう一度顔を見合わせた後、困ったように太い眉を下げた。
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