それはきっと、気の迷い。

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それはきっと、気の迷い。

「や……は、離してくださ……っ」 「黙れよ平凡、誰に命令してんだ」 「そ、そんなつもりじゃ――、んうっ!?」 嗚呼どうしよう、まただ。 目の前にいた生徒会長さまが何故かいきなり僕に、キ、キスしてきた。 だけど会長さまと僕は、別に恋人とかって訳じゃないのに。 むしろひどく嫌われてるし邪魔者扱い……。 なぜなら会長さまが好きなのは、最近学園に転入してきた珠紀(たまき)君だから。  *** 珠紀くんと最初に会ったその日。 彼は寮の同室になった僕を「親友」と呼び、常に行動を共にするよう強要してきた。 以降、たまに用事があって僕がそばを離れようとすると理由も聞かずに怒鳴られたり殴られたり。 しかも珠紀くんだけじゃなくて、彼に惚れて傍にいる人達にまで 「わざと珠紀の気を引こうとしやがって、この平凡が!」 「そうやって珠紀にかまって欲しいだけなのでしょう? 本当に愚かなクズですね」 「……嘘つき……邪魔」 「ねー、そんなに嫌なら学校辞めちゃいなよぉ? つか、マジ目障りだしー」 と厭味を言われるようになった。 ちなみに上から生徒会長・副会長・書記・会計さま。 そして学園の『抱かれたいランキング』上位に選ばれるほど美形な彼らには、親衛隊というモノがあって。 僕はその人達にも疎まれ憎まれ。 嫌がらせや、呼び出しを受けて脅される事もしばしば……。 珠紀くんから離れようにも力ではかなわず、そして彼の近くには必ず人気者な皆様がいる。 その結果、逃げることも出来ないまま僕はどんどん嫌われていきました。 なのに。 「……っ、ハァハァ……嫌ぁ、んん」 「チュッ……は、黙れよ。くそ、何で俺がこんな平凡なんかに!」 苛立ちを隠さず、キスの合間にそう呟く生徒会長さま。 その疑問の答えは僕が一番知りたいです。 珠紀くんを大好きな皆様が、疎ましく思っている筈の僕。 だから多分、嫌がらせのつもりでこんなキ、キスとか無理やりしてるんだよね。 じゃなきゃ僕みたいな可愛くもない平凡相手に、突然鼻息を荒くして襲い掛かったりする筈ないもの。 実はさっきも言ったけど、こんな風にキスや……押し倒されたりするのは会長さまが初めてじゃないんだ。 .
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