ニブレス、もらいました

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沢田(さわだ)(かなめ)、だろ?」 「そう、だけど……?」  え、誰だこいつ? シュッとしたイケメンだけど、見たことない学生だな。 「ごめん、えっと、誰だっけ?」 「ふふ、やっぱりわからないか、でも仕方ないよ。高二で転校したあと、30キロ以上痩せたから」  さ、30キロ?!……。 「五十嵐(いがらし)(わたる)だよ」 「……え? いがらし───えええー! あのスゲー肥満……ぁ、ごめん」  この目鼻を肉に埋もれさせれば、確かにあの頃の五十嵐かも。 「はは……、今ちょっと傷ついた」 「ゴメンゴメン、そういえば高校の途中で転校したんだったな。へえ、ずいぶん痩せてカッコよくなったな! 同じ大学だったなんて全然気づかなかったよ」 「俺も気がつかなかったよ、しかもこんなところで要と会うなんて、ビックリしたよ。クラブ見学に来たのか?」 「いや、2限が休講になってさ、図書館に行こうとして迷った、はは……」 「ふふ、相変らず方向音痴なんだ、直ってないんだね」  へえ……そんなこと知ってたんだ。 「俺、ゲーム研究部なんだ。ちょっと部室に寄っていけよ。ゲーム色々揃ってるぞ」 「へぇ……」  流されるように歩いて───ふと、何か嫌なものを感じた。  五十嵐は部室のドアを開けて僕を促す。 「ほら、遠慮すんな、この時間は誰も来ねえから」 「うん、……」  部室に入りかけて、立ち止まる。すると五十嵐の細長い指が僕の腕を引き止めるようにつかんだ。この指は──昔はもっとずんぐりと太くて、その指で俺の乳首をひねったんだっけ。もちろんそれはただのおふざけだったんだろうけど──今はスリムなその指は、蒼真の服越しに僕の腕をしっかりとつかんでいる。 「いや、レポートあるし、止めとくよ。また今度な」  去ろうとすると五十嵐の手に力がこもった。 「なっ、おい何だよ!」  振りほどこうとしてもびくともしない 「要、さっきグラウンドで蒼真を見つめていたな。おまえらまだ続いてたのか、よく飽きないな」 「何のことだよ、放せってばっ」 「チッ」  五十嵐は僕の腕を思い切り引っぱった。抵抗すると布が破ける音がして蒼真の上着が脱げる。一旦は逃げ出せたと思ったのにまたすぐつかまった。  あっという間に室内に引きずり込まれる。五十嵐は足でドアを閉めると、乱暴に僕の体を壁に押し付けた。 「ぅ、なにすんだよ!」 「言っとくけどこの時間は誰も来ない。叫んでもムダだよ、この部屋はゲーム用に防音してあるし」 「くそっ、放せよ!」 五十嵐はニヤついた顔で僕を見つめた。 「ふふ、要、ホント久しぶりだね」 「くっ──五十嵐っ、お前さっき、僕と初めて偶然ここで会ったみたいな言い方してたけど、グラウンドのところから僕をつけてたのかっ」 「そうだよ、ふふふっ……入学式でお前を見つけたときは、嬉しかったなぁ」 「っ、そんな前から」 五十嵐は僕の顔を舐めるように見回した。 「要……お前、綺麗になったな」 「なっ、何言ってんだよっ───放せっ」  五十嵐は僕の両手をつかんで持ち上げると片手で壁に押し付け、両足で僕の抵抗を封じた。情けないことにほとんど身動きできない───。 「くっ、馬鹿力は昔のままだな、放せってば!」 「要は相変わらず非力だね、カワイイな。それに──ここ(・・)も、相変わらずみたいだ」  五十嵐の粘った視線が落ちて僕の胸に貼り付いた。
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