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 後期になってから、康之はやたらと話しかけてきた。学食で一緒にごはんを食べることも増えた。  いろんなことを話した気はするが、ほとんどは彼が話していた。 「志乃って田中くんとつきあってたりする?」  由貴にも言われたことがあったが 「ううん、同じゼミだから話すけど、つきあったりとかはしてない」  と、私は否定した。  実際、康之と話すのが楽しくなかったわけではない。彼の考え方は嫌いではないし、私と「似ている」と言ったことも理解できなくはない。  しかし、彼は私よりも極端な考えをしていた。 「他の奴らみたいに、過去問やれば単位取れるようなやり方したくないんだよね。実力で取りたいよ。せっかく大学通ってるんだし」  実力で単位を取る、その考え方自体はいいと思った。学生は本来そうあるべきだ。  しかし、私は「自分が本当にやりたい科目」だけその考え方で、一般教養や専門科目だが興味のない科目は、過去問や事前に伝えられる出題範囲を知った上で単位を取っていた。    そのことを彼に話すと、 「志乃は徹底できてないよね。もったいない」  と言われた。馬鹿にされたような、見下されたような気持ちになったが、反論はしなかった。  いつから下の名前で呼ばれだしたのか、もう覚えていない。
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