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 四年になり、就職活動が始まった。  私は証券会社に内定を決めた。第一志望だったこともあり、達成感はあった。  康之は、広告企画などの会社を受けて、あるベンチャー系の会社から内定を貰っていた。 「今は十人足らずしかいない無名の会社だけどね。そこらの下請けじゃなくて、プライド持って自分らの仕事してる感じがいいと思ったんだ」  彼がやってみたい仕事に就けるならそれでいいと思っていたので、素直に「よかったね、おめでとう」と言った。が、 「なんか見下されてる気はするね」  康之が言った。私は戸惑った。 「志乃は大手証券会社だからねー、なんか上から目線?」  康之の瞳が濁った光を放った。 「そんなこと思ってないよ。上からとかないよ。やりたいことやれるのが大事って言ってたのは、康之でしょ?」 「それは……そうなんだけどね。ちょっと志乃の喋り方が気になった」 「そう……。ごめん」  謝ったのは、この話を終わらせたかったからだった。濁った光を見るのは辛かった。  彼が思い描く未来予想図はこの頃から狂いを見せ始めていた。
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