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3.
四年になり、就職活動が始まった。
私は証券会社に内定を決めた。第一志望だったこともあり、達成感はあった。
康之は、広告企画などの会社を受けて、あるベンチャー系の会社から内定を貰っていた。
「今は十人足らずしかいない無名の会社だけどね。そこらの下請けじゃなくて、プライド持って自分らの仕事してる感じがいいと思ったんだ」
彼がやってみたい仕事に就けるならそれでいいと思っていたので、素直に「よかったね、おめでとう」と言った。が、
「なんか見下されてる気はするね」
康之が言った。私は戸惑った。
「志乃は大手証券会社だからねー、なんか上から目線?」
康之の瞳が濁った光を放った。
「そんなこと思ってないよ。上からとかないよ。やりたいことやれるのが大事って言ってたのは、康之でしょ?」
「それは……そうなんだけどね。ちょっと志乃の喋り方が気になった」
「そう……。ごめん」
謝ったのは、この話を終わらせたかったからだった。濁った光を見るのは辛かった。
彼が思い描く未来予想図はこの頃から狂いを見せ始めていた。
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