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お前は楽しいかもしれないがその間俺はずっと痛みを堪えっぱなしだ。くそ、これは虐めか拷問か。
だいたい男の平らな胸にそこまでして何を求めているんだ。虚しくはならないのか?
「もう良いだろ、手を離せ」
「え~あと少しだけ!」
「無理。いつまでも裸じゃ寒いんだよ、いい加減カゼ引くわ」
「じゃあじゃあ、俺があっためたげる。もし鈴が風邪引いても付きっきりで看病するから安心して良いよ~」
「いらないです寄ってくるな変態。むしろ不安な気持ちで胸が一杯になりましたよコンニャロ」
「えっ、鈴の胸が俺で一杯!?」
喜ぶなよバカ。
どういう思考回路だ。
よく分からないけど頬を染めた奴がクネクネ悶えているその隙に、ベッドから離れ服を着込む。
……しかし、ちょっとまだ立つのが辛い。
手加減なしでがっつきやがって、俺をもっと労れこのド変態野郎。
何ならいっそ不感症じゃない他の誰かと致せば良いのに。見た目はカッコいいんだし、男女問わずよく告白されてるだろお前。
それを片っ端から断るな、勿体無い。
「本気で好きな人がいるから」
って決まり文句、噂になってるみたいだぞ?
まあどうせ嘘なんだろうけど。
そんな相手が本当にいたら、今頃俺とこんなことしてる訳がない。口から出任せで一番楽な理由を選んだに決まってる。
とは思うものの、一応聞いておくか。
「鳴海、お前の本気で好きな人って誰」
「もちろん鈴だよ」
「ふうん、なるほどやっぱ嘘か」
「はい? ……え、ちょっと何言ってんの鈴。本当だってば俺が好きなのは嘘偽りなく、本っ気で鈴だけなんだからね!」
「へえ、それはどうもありがとう」
「信じてないよね、それ絶対信じてない時の顔だよね! 待ってねえ何で。俺こんな毎日いっぱい鈴が大好きって言ってるのに!?」
しまった、予想以上にうるさい。
それほど必死な理由は何だろうか。
まさか本当に好きな人がいるのだとしたら、よっぽど知られたくない相手。人妻か……いや鳴海の場合、旦那の方という可能性も。
うん、十分あり得る。
そうか年上の男性と不倫(片恋?)関係じゃ、いくら親友の俺にだって話せない訳だ。
しかしまあ。
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