目が覚めたら

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「いくらお前でも、他人の夫と不倫はさすがに俺もビックリ」 「はああ? ……もういいよ、鈴に何言ったってどうせ信じて貰えないし」 「失礼な」 「だから俺――」 腕を掴まれ再び抱き寄せられ、唇が触れ合う。 「鈴が信じてくれるまで、こうしてずーっと離れないから」 「……ふぅん、じゃあ一生離れられないな」 「えっ? 鈴それってまさかプロポーズ」 「お前の発言は常に信頼性に欠け、あてにならない。よって、俺が信じる日が来ることは一生かかっても無い。以上」 「えええ~!?」と、わめく鳴海。 人の目の前で本当にうるさい奴だな。 「くっそ~可愛い顔してるくせに鈴ったら氷の女王様め。マジでこうなりゃ、えーいっ!」 「顔関係ないだろ。つか可愛くないし、っァん……!?」 何だ今の。 鳴海が予告なく触ったせいで、変な声が出た。 あん、て。本当に俺の声かと思うくらい上擦ってて気色悪かった。一瞬、女の子みたいだったし。 「す……鈴、もしかして今の感じた?」 「いや絶対違う。お前が急に触るから驚いただけだろ」 不満そうに口を尖らせぶつぶつ言う鳴海。 それを今度こそ無視して、寝室を出る。 とりあえず顔洗って飯食おう。 身体は怠いが、せっかく空いたスケジュールを有意義に過ごさねば。これ以上俺の身体と時間を他人に好き勝手されたくない。 恨めしそうにこちらを眺める色ボケなんか、もう知らん。さっさと人の旦那と愛人関係でも結んでこい。 そう考えていた俺は、この時―― 不感症の筈の自分がやがてただ一人、鳴海にだけは何故か反応するようになる、とんでもない変化の兆しを見逃した。 もっとも、見逃さなければその後の展開が違うものになったかどうかは疑問だが。 どちらにしろ、とりあえず 「一生離れられない」という結末が待っている事実だけは明白だ。 要するに、毎日毎日「好き」だの「愛してる」だのささやかれて、何度「感じないから」と断っても執拗に愛撫され続けられれば……人の身体は心だけに限らず、ほだされてしまうものなんだろう。多分。 .
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